「訪問リハビリは、1人の利用者さんに複数の事業所が関わってもいいの?」——訪問リハビリの現場やケアマネジメントをしていると、一度はぶつかる疑問ではないでしょうか。たとえば、いま利用している事業所に言語聴覚士がいない、回数を増やしたいのに空きがない、といった場面で出てくる悩みです。

結論からお伝えすると、訪問リハビリは1人の利用者さんに複数の事業所が関わることができます。ただし、回数制限の“合算”や事業所間の連携など、押さえておくべきルールがあります。この記事では、複数事業所が関わる具体例から、回数制限の考え方、注意点までを、制度の根拠とともにわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 訪問リハビリに複数事業所が関われるのかの結論
  • 複数事業所が関わる具体的なケース(ST追加・回数追加など)
  • 回数制限が複数事業所で“合算”される重要ルール
  • 複数事業所が関わるときの注意点と連携のコツ
  • 介護保険・医療保険での扱いの違い

訪問リハビリは複数事業所が関われる?【結論】

結論からお伝えします。訪問リハビリは、1人の利用者さんに対して複数の事業所が関わることができます。「1つの事業所しか使えない」という決まりはありません。

利用者さんの状態やニーズによっては、1つの事業所だけでは対応しきれないことがあります。そうした場合に、別の事業所のサービスを組み合わせることで、より適切な支援が実現できます。

ちびウルフちびウルフ

1つの事業所でまとめたほうが連携しやすそうなのに、わざわざ複数にする意味あるの?

リハウルフリハウルフ

いい質問だね。もちろん1事業所で完結できればそれが理想なんだ。でも、必要な職種がいなかったり、スケジュールが埋まっていたりすると、別の事業所の力を借りたほうが利用者さんのためになることがあるんだよ。

複数事業所が関わる具体例

実際に、どんなときに複数事業所が関わるのでしょうか。現場でよくある2つのケースを紹介します。

ケース①:在籍していない職種を補う

訪問リハビリ事業所Aで理学療法士による訪問リハビリを利用していた利用者さんが、言語聴覚士(ST)のリハビリも受けたいと希望したとします。しかし、事業所AにはSTが在籍していません。そこで、STが在籍する事業所Bから言語聴覚療法を追加で提供する——これが典型的なケースです。

ケース②:必要な回数を確保する

事業所Aで作業療法士による訪問リハビリを週1回40分実施していたところ、利用者さんから「週2回に増やしたい」という希望が出たとします。ところが事業所Aのスケジュールに空きがありません。この場合、事業所Bの作業療法士による訪問リハビリを追加することで、希望の回数を確保できます。

ポイント複数事業所の活用は「職種を補う」「回数を補う」の2つが代表的な目的です。利用者さんに必要なリハビリを、無理なく届けるための選択肢として有効です。

回数制限は複数事業所で“合算”される【最重要】

ここが最も大切なポイントです。複数事業所が関わる場合でも、訪問リハビリの回数制限は各事業所が別々に持てるわけではなく、利用者さん1人あたりで合算してカウントします。

訪問リハビリ(1回20分以上)の回数の上限は、原則として次のとおりです。

区分回数の上限
原則1週につき6回(=120分)まで
退院(退所)日から起算して3か月以内1週につき12回(=240分)まで

つまり、事業所Aと事業所Bが両方関わる場合でも、AとBの提供回数を合わせて週6回(退院・退所後3か月以内は週12回)以内に収める必要があります。「事業所が2つだから、それぞれ週6回ずつ」とはなりません。ここを誤解すると算定上のトラブルにつながるため、特に注意が必要です。

注意回数制限は事業所ごとではなく、利用者さん単位で合算します。複数事業所で関わるときは、お互いの提供回数を把握し合い、合計が上限を超えないよう調整しましょう。退院・退所からの経過月数によって上限が変わる点も要確認です。

複数事業所が関わるときの注意点

複数事業所が安全に連携するために、押さえておきたい注意点を整理します。

  1. 回数の上限(週6回/退院・退所後3か月以内は週12回)を、複数事業所の合計で守る
  2. 各事業所のセラピスト間で、目標・実施内容・利用者さんの状態をしっかり共有する
  3. ケアマネジャーがケアプラン(居宅サービス計画)上で全体を調整し、整合を取る
  4. リハビリの方向性が事業所間でバラバラにならないよう、役割分担を明確にする

特に重要なのがセラピスト間の連携です。同じ利用者さんに別々の事業所が関わると、目標や進め方がちぐはぐになりがちです。「事業所Aは歩行、事業所Bは嚥下」のように役割を整理し、情報を共有することで、リハビリの効果を最大化できます。

ちびウルフちびウルフ

事業所が違うと、連携ってどうやって取ればいいの?

リハウルフリハウルフ

サービス担当者会議や、ケアマネさんを通じた情報共有が基本だよ。電話や報告書でこまめにやり取りするのも大切。利用者さんを真ん中に置いて、みんなで同じ方向を向くことがポイントなんだ。

介護保険と医療保険での扱いの違い

訪問リハビリは、利用者さんの状態や対象疾患によって介護保険か医療保険のいずれかで提供されます。複数事業所が関わるという考え方自体はどちらでも可能ですが、回数の数え方や算定ルールには違いがあります。

ポイント介護保険の訪問リハビリはケアプランに位置づけて提供し、医療保険の訪問リハビリ(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料など)は医師の指示のもとで提供します。どちらも「1回20分以上・週6回(退院後3か月以内は週12回)」という考え方が基本ですが、併用の可否や優先順位には細かな決まりがあります。判断に迷う場合は、保険の区分と算定ルールを必ず確認しましょう。

制度の細部は改定で変わることもあるため、最新の介護報酬・診療報酬の内容や、地域の保険者(市町村)・都道府県の取り扱いを確認したうえで運用することをおすすめします。

ケアマネ・セラピストが押さえる実務ポイント

複数事業所の調整は、ケアマネジャーとセラピストの連携にかかっています。実務で意識したいポイントをまとめます。

立場意識したいこと
ケアマネジャー各事業所の提供回数を把握し、合計が上限を超えないようケアプランで調整する。サービス担当者会議で役割分担と目標を共有する
セラピスト(PT/OT/ST)他事業所の実施内容を確認し、リハビリ方針が重複・矛盾しないよう連携する。利用者さんの変化を相互に報告し合う
事業所の管理者算定ルール(回数・保険区分)を正しく理解し、連携体制を整える

複数事業所での支援は、うまく機能すれば利用者さんにとって大きなメリットになります。一方で、連携不足や回数管理のミスはトラブルのもとです。「制度を正しく理解し、関係者で情報を共有する」ことを徹底しましょう。

複数事業所を活用するメリット・デメリット

複数事業所での支援は便利な一方で、注意すべき側面もあります。導入を検討する際は、メリットとデメリットの両方を理解しておきましょう。

メリットデメリット・注意点
必要な職種(PT・OT・ST)を柔軟に組み合わせられる事業所間の連携に手間がかかる
スケジュールの空き状況に左右されず回数を確保できる情報共有が不足するとリハビリ方針がちぐはぐになりやすい
利用者さんのニーズに合わせた支援が組み立てやすい回数制限の合算管理を誤ると算定トラブルになる
1事業所の負担を分散できる利用者・家族が窓口の多さに戸惑うことがある

このように、複数事業所の活用は「柔軟さ」と「連携の手間」がトレードオフになります。デメリットの多くは、関係者がこまめに情報を共有し、ケアマネジャーが全体を調整することで十分にカバーできます。大切なのは、利用者さんにとって本当に必要な体制かどうかを見極めることです。

ポイント「複数事業所にすること」が目的になってはいけません。あくまで利用者さんの目標達成に必要だから組み合わせる、という視点を忘れないようにしましょう。1事業所で十分に対応できるなら、その方が連携はスムーズです。

よくある質問(FAQ)

訪問リハビリは複数の事業所を同時に利用できますか?
利用できます。1人の利用者さんに対して、複数の訪問リハビリ事業所が関わることが可能です。在籍していない職種を補ったり、必要な回数を確保したりする目的で活用されます。
事業所が2つなら、回数も2倍使えますか?
使えません。回数制限は事業所ごとではなく、利用者さん1人あたりで合算します。原則は週6回(退院・退所後3か月以内は週12回)までで、複数事業所の合計でこの上限を守る必要があります。
複数事業所で関わるとき、誰が全体を調整しますか?
介護保険の場合は、ケアマネジャーがケアプラン上で全体を調整します。サービス担当者会議などを通じて、各事業所の役割分担・目標・回数を共有することが大切です。
理学療法士と言語聴覚士を別々の事業所で受けてもいいですか?
問題ありません。1つの事業所に必要な職種がいない場合、別の事業所からその職種のリハビリを受けることはよくあるケースです。ただし回数は合算で管理します。
連携で特に気をつけることは何ですか?
セラピスト間で目標やリハビリ内容を共有し、方針が重複・矛盾しないようにすることです。利用者さんの状態変化もこまめに報告し合い、同じ方向を向いて支援することが重要です。
まとめ
  • 訪問リハビリは1人の利用者さんに複数事業所が関わることができる
  • 「職種を補う」「回数を補う」のが代表的な目的
  • 回数制限は事業所ごとではなく利用者単位で合算(原則週6回/退院・退所後3か月以内は週12回)
  • セラピスト間・ケアマネとの連携と情報共有が成功のカギ
  • 介護保険・医療保険で算定ルールが異なるため最新情報を確認する

参考:厚生労働省 介護報酬(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準)および診療報酬に関する告示・解釈通知。回数の上限や算定要件の詳細は、最新の改定内容および各保険者(市町村)・都道府県の取り扱いをご確認ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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