訪問リハビリのトラブル6選|原因・予防策を理学療法士が解説

「訪問リハビリってどんなトラブルが起こるの?」「未然に防ぐにはどうすればいい?」——利用者さんのご自宅という”アウェイ”で働く訪問リハビリでは、病院や施設とは違った種類のトラブルが起こります。多くは事前のひと工夫で防げるものばかりです。
この記事では、現場で実際に起こりやすい訪問リハビリのトラブルを6つのパターンに整理し、原因と予防策、起きてしまったときの対応を理学療法士の視点でわかりやすく解説します。新人セラピストから事業所の管理者まで、明日からの実務にそのまま使える内容です。
- 訪問リハビリで起こりやすいトラブル6パターンの全体像
- それぞれのトラブルの原因と具体的な予防策
- トラブルが起きてしまったときの初動対応
- リハ職・看護師が今日から実践できる予防の5原則
訪問リハビリで起こるトラブルとは?まず全体像を押さえよう
訪問リハビリは、利用者さんのご自宅に出向いてリハビリを提供する在宅サービスです。生活の場で支援できる大きな魅力がある一方で、「他人の家で働く」「移動が伴う」「多職種・複数名で関わる」という特性ゆえに、独特のトラブルが生まれます。
本記事では、現場で頻度が高いものを次の6つに整理しました。
| No. | トラブルの種類 | 主な舞台 |
|---|---|---|
| 1 | 利用者宅の物の破損 | ご自宅の設備・私物 |
| 2 | 情報共有不足による行き違い | 事業所内・多職種連携 |
| 3 | 交通事故・遅刻 | 移動中・駐車時 |
| 4 | 転倒・けが | リハビリ場面 |
| 5 | マナー違反 | 訪問時の立ち居振る舞い |
| 6 | ハラスメント | 密室での1対1場面 |
トラブル1.利用者宅の物の破損
訪問リハビリは利用者さんのご自宅という環境を借りて行うため、ベッド・手すり・椅子・浴室・トイレなどご家庭の設備や私物を使わせていただく場面がとても多くなります。悪気がなくても、運動指導中に物を倒したり、傷をつけてしまうことは起こり得ます。
よくある破損の場面
- ベッドを使ったストレッチ・起き上がり練習中の寝具やフレームの破損
- 自宅の手すりや椅子を使った立位練習での負荷のかけすぎ
- 浴室・トイレでの生活動作練習中の備品の破損
- 使用前に「お借りしますね」とひと声かける習慣をつける
- 家具や福祉用具の耐久性・ガタつきを事前に確認する
- 万一に備え、事業所として賠償責任保険の加入状況を把握しておく
破損してしまった場合は、隠さず速やかに謝罪し、事業所へ報告することが信頼を守る最善策です。
トラブル2.情報共有不足による行き違い
訪問リハビリでは、1人の利用者さんに複数のセラピストが入る「複数名担当制」や、ケアマネジャー・主治医・訪問看護との多職種連携が日常的に発生します。ここで生まれやすいのが「言った・言わない」の情報共有トラブルです。
たとえば利用者さんがAセラピストに伝えた要望がBセラピストに共有されていなかったり、ケアマネジャーからの「来週は受診のため休む」という伝言を伝え忘れたりすると、利用者さんや連携先の信頼を一気に失います。新規依頼が途絶える経営リスクにも直結します。
- 電話・口頭での伝達は必ずメモ・記録に残す
- 担当者間で申し送りのルール(誰が・いつ・どこに記録するか)を統一する
- 重要事項はその日のうちに共有を完了させる
トラブル3.交通事故・遅刻
訪問リハビリは自動車・バイク・自転車で利用者宅を回るため、移動に伴う交通事故や遅刻がつきものです。事故は相手方とのトラブルに、遅刻は利用者さんとの信頼低下につながります。
- 業務中の運転は私生活以上に余裕を持った行動計画を立てる
- 渋滞・工事で遅れそうなときは遅れる前に連絡を入れる
- 短時間の遅刻でも到着直後にまず謝罪する
トラブル4.転倒・けが
どれだけ気をつけていても、リハビリ中の転倒・けがはごくまれに起こります。在宅は段差や障害物が多く、屋外歩行練習中の転倒、体格差で支えきれないケース、目を離した一瞬での自力行動などがリスクです。転倒は最も重大なトラブルに発展しやすいため、備えが肝心です。
屋外歩行練習前のチェックリスト
- 血圧計など必要なバイタル測定機器を携帯しているか
- 自分のポケットに手を入れたまま付き添っていないか
- 緊急連絡先を手元に控えているか
- 携帯電話を持っているか
- 身体機能面のリスク(ふらつき・耐久性)を把握できているか
体格差が大きい利用者さんには担当者の組み合わせを配慮し、常に手の届く位置で見守ることが基本です。万一転倒した場合は、速やかに状態を確認し、必要に応じて主治医・家族・事業所へ報告します。
トラブル5.マナー違反
訪問リハビリのトラブルで最も多い原因がマナー違反です。直接は言われなくても、些細な振る舞いが利用者さんやご家族を不快にさせ、関係悪化につながります。
- ドアを強く閉める/水道を勢いよく出す
- 声が必要以上に大きい
- あぐらなど砕けすぎた座り方
- 敬語が使えていない
「自分は気にしない」ことでも、相手にとっては不快ということがあります。“自分の物差し”ではなく”相手の物差し”で行動するのが訪問の基本です。
トラブル6.ハラスメント(セクハラなど)
密室で1対1になりやすい訪問リハビリでは、セクハラをはじめとするハラスメント被害も無視できません。録音・撮影での立証が難しく、訴えても逆に名誉毀損と言われかねない難しさがあります。
- 担当者の性別マッチングを検討する
- 必要に応じて複数名訪問に切り替える
- 被害を個人で抱えさせず報告・相談できる体制を整える
リハ職・看護師が今日からできるトラブル予防5原則
6パターンを踏まえ、現場のPT・OT・ST・看護師がすぐに実践できる予防の原則をまとめます。
- 事前準備を徹底する:環境・物品・リスクを訪問前に確認する
- ひと声かける:物を借りる前、動作を変える前に必ず声をかける
- 記録・共有を即日完了:伝言・変更は当日中にチームへ
- 相手目線で振る舞う:マナーは”相手の物差し”で判断する
- ひとりで抱えない:困りごとは事業所へ早めに相談する
よくある質問(FAQ)
利用者宅の物を壊してしまったらどうすればいい?
遅刻しそうなときの連絡はどのタイミングがベスト?
ハラスメントを受けたら個人で対応すべき?
転倒事故を完全にゼロにできる?
訪問リハビリのトラブルは、利用者宅の物の破損・情報共有不足・交通事故や遅刻・転倒やけが・マナー違反・ハラスメントの6パターンに大別できます。
- 多くは事前準備とひと声かけで防げる
- 起きてしまったら隠さず謝罪・即報告が信頼を守る
- ハラスメントなどは事業所としての体制で対応する
「相手の物差しで考える」姿勢を全員で共有し、安心して利用していただける訪問リハビリを目指しましょう。


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