看多機の特別地域看護小規模多機能型居宅介護加算・中山間地域等における小規模事業所加算・中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)には、事業所や利用者が置かれた地理的な条件を評価する加算が3つあります。特別地域看護小規模多機能型居宅介護加算15%・中山間地域等における小規模事業所加算10%・中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算5%です。
3つとも「地域」を見ていますが、参照している告示が違い、対象になる地域の範囲も違います。15%と10%は事業所の所在地、5%は利用者の居住地で判定します。名前が似ているため混同されがちですが、根拠条文をたどると設計がはっきり分かれています。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費の注9・注10・注11、厚生労働大臣が定める地域(平成24年厚生労働省告示第120号)、厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(平成21年厚生労働省告示第83号)の原文を確認して整理しました。
- 3つの地域加算の加算率と、判定するのが事業所か利用者か
- 15%と10%で対象地域が重ならないこと
- 5%の加算だけ「通常の事業の実施地域を越えて」が要件であること
- それぞれの根拠となる告示の違い
- 半島振興対策実施地域・特定農山村地域は10%の対象であること
- 短期利用居宅介護費への加算の有無
- 3つを重ねて算定できるか
- 加算率が所定単位数に乗ることの意味
ちびウルフ15%と10%、どちらも過疎地域が入っていますよね。両方取れるんですか?
リハウルフ取れません。告示83号の第1号には「厚生労働大臣が定める地域(告示120号)に規定する地域を除いた地域」と書いてあります。15%の対象地域は、10%の対象から明示的に除かれている。重ならないように作られているので、どちらか一方です。
看多機の地域加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の地域加算は、離島・山間部・豪雪地帯など、サービスの提供に余分な負担がかかる地域での事業運営を支える加算です。
看多機は通い・訪問・泊まりを組み合わせるサービスで、訪問が基本機能に含まれます。移動距離が長い地域では、同じ人数を支えるのに何倍もの時間がかかります。それでも報酬は要介護度別の月額包括なので、そのままでは事業として成り立ちません。
3つの加算は、その負担の性質に応じて設計されています。事業所そのものが条件不利地域にある場合と、事業所は通常の地域にあるが利用者が遠方に住んでいる場合とで、評価の仕方が分かれています。
令和6年度介護報酬改定では、これらの加算率・要件に変更はありませんでした。
地域加算3種の加算率
| 加算 | 加算率 | 根拠 | 判定するもの | 算定の単位 |
|---|---|---|---|---|
| 特別地域看護小規模多機能型居宅介護加算 | 15% | 注9 | 事業所の所在地 | イのみ・1月につき |
| 中山間地域等における小規模事業所加算 | 10% | 注10 | 事業所の所在地 | イは1月・ロは1日につき |
| 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5% | 注11 | 利用者の居住地 | イのみ・1月につき |
金額のイメージ
| 要介護度 | 基本報酬 | 15% | 10% | 5% |
|---|---|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 1,867単位 | 1,245単位 | 622単位 |
| 要介護3 | 24,481単位 | 3,672単位 | 2,448単位 | 1,224単位 |
| 要介護5 | 31,408単位 | 4,711単位 | 3,141単位 | 1,570単位 |
※基本報酬のみに率を乗じた概算です。実際は所定単位数に乗じます。
率で乗る加算なので、要介護度が高いほど金額が大きくなります。要介護5で15%なら月4,711単位。看多機の加算のなかでも最大級の規模です。
特別地域看護小規模多機能型居宅介護加算(15%)
9 イについて、別に厚生労働大臣が定める地域に所在し、かつ、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所(その一部として使用される事務所が当該地域に所在しない場合は、当該事務所を除く。)又はその一部として使用される事務所の看護小規模多機能型居宅介護従業者が指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、特別地域看護小規模多機能型居宅介護加算として、1月につき所定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数に加算する。
対象地域(告示120号)
| 区分 | 地域 |
|---|---|
| 一 | 離島振興法により指定された離島振興対策実施地域 |
| 二 | 奄美群島 |
| 三 | 山村振興法により指定された振興山村 |
| 四 | 小笠原諸島 |
| 五 | 沖縄振興特別措置法に規定する離島 |
| 六 | 豪雪地帯・特別豪雪地帯・辺地・過疎地域その他の地域のうち、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難と認められる地域であって、厚生労働大臣が別に定めるもの |
六の区分は「厚生労働大臣が別に定めるもの」に限られます。豪雪地帯や過疎地域であれば自動的に該当するわけではありません。この告示120号は遠隔死亡診断補助加算(タ)も参照しています。
「その一部として使用される事務所」
注9には、事業所本体が対象地域にない場合でも、対象地域にある事務所(サテライト事務所等)の従業者がサービスを行った場合は算定できるという構造が書き込まれています。逆に、事業所が対象地域にあってもその事務所が対象地域にない場合は、その事務所は除かれます。
中山間地域等における小規模事業所加算(10%)
10 別に厚生労働大臣が定める地域に所在し、かつ、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所(略)又はその一部として使用される事務所の看護小規模多機能型居宅介護従業者が指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、イについては1月につき、ロについては1日につき、所定単位数の100分の10に相当する単位数を所定単位数に加算する。
対象地域(告示83号 第1号)
| 区分 | 地域 |
|---|---|
| イ | 豪雪地帯および特別豪雪地帯 |
| ロ | 辺地 |
| ハ | 半島振興法により指定された半島振興対策実施地域 |
| ニ | 特定農山村地域 |
| ホ | 過疎地域 |
ただし条文には重要な限定があります。「厚生労働大臣が定める一単位の単価(平成27年厚生労働省告示第93号)第2号のその他の地域であって、次のいずれかに該当する地域のうち厚生労働大臣が定める地域(告示120号)に規定する地域を除いた地域」です。
告示83号 第1号は、告示120号の地域(=15%の対象)を明示的に除いています。同じ事業所が15%と10%の両方を算定することはありません。まず15%の対象かを確認し、該当しなければ10%を確認する順序になります。
ロ(短期利用)にも加算される
注10は「イについては1月につき、ロについては1日につき」と書かれています。3つの地域加算のうち、短期利用居宅介護費にも加算されるのはこの10%だけです。注9(15%)と注11(5%)はいずれも「イについて」に限定されています。
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算(5%)
11 イについては、指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が、別に厚生労働大臣が定める地域に居住している登録者に対して、通常の事業の実施地域(略)を越えて、指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、1月につき所定単位数の100分の5に相当する単位数を所定単位数に加算する。
対象地域(告示83号 第2号)
| 区分 | 地域 |
|---|---|
| イ | 離島振興対策実施地域 |
| ロ | 奄美群島 |
| ハ | 豪雪地帯・特別豪雪地帯 |
| ニ | 辺地 |
| ホ | 振興山村 |
| ヘ | 小笠原諸島 |
| ト | 半島振興対策実施地域 |
| チ | 特定農山村地域 |
| リ | 過疎地域 |
| ヌ | 沖縄振興特別措置法に規定する離島 |
第2号は10区分あり、第1号(10%の対象)より広い範囲を含みます。そして第1号のような「告示120号の地域を除く」という限定がありません。
「通常の事業の実施地域を越えて」が要件
この加算だけ、判定するのが事業所ではなく利用者の居住地です。そのうえで通常の事業の実施地域を越えてサービスを行っていることが要件になります。
通常の事業の実施地域は、運営規程で定め、重要事項説明書に記載しているものです。その範囲外に住む方について算定する加算なので、実施地域の設定そのものが算定の可否を左右します。
担当したケースでも、実施地域を広めに設定していたために算定できなかった事業所がありました。実態に合わない広さで設定していると、遠方への訪問コストを回収できません。運営規程の見直しとあわせて検討する価値があります。
3つの加算の関係を整理する
| 比較項目 | 15%(注9) | 10%(注10) | 5%(注11) |
|---|---|---|---|
| 根拠となる地域の告示 | 告示120号 | 告示83号 第1号 | 告示83号 第2号 |
| 判定対象 | 事業所の所在地 | 事業所の所在地 | 利用者の居住地 |
| 通常の事業の実施地域 | 要件でない | 要件でない | 越えることが要件 |
| 短期利用(ロ) | 対象外 | 1日につき加算 | 対象外 |
| 届出 | 必要 | 必要 | 条文上の定めなし |
| 15%との重複 | — | 地域が除外され重複しない | 条文上の除外規定なし |
注11には、注10のような「告示120号の地域を除く」という限定がありません。15%または10%を算定している事業所が、実施地域外の利用者について5%も算定できるかは、条文からは断定できません。市町村に確認してください。
地域加算の注意点
「所定単位数」に乗じる
3つとも「所定単位数の100分の◯」です。基本報酬だけでなく、その月に算定した加算を含めた所定単位数に乗じます。看護体制強化加算3,000単位を算定していれば、その分にも15%が乗る計算になります。
自地域が該当するかは市町村に確認
豪雪地帯・辺地・過疎地域などは法律ごとに指定範囲が異なり、市町村内でも一部の区域だけが該当する場合があります。とくに告示120号の六「厚生労働大臣が別に定めるもの」は、自治体単位で個別に指定されています。思い込みで判断せず、必ず市町村に確認してください。
過疎地域の経過措置
告示83号には、旧過疎地域を令和6年3月31日までの間に限り過疎地域とみなす経過措置が置かれていました。2026年時点ではこの経過措置は終了しています。過去に算定していた事業所は、現行の指定状況を再確認してください。
区分支給限度基準額との関係
看多機の基本報酬は限度額の管理対象です。率で乗る加算は金額が大きくなるため、限度額を圧迫します。要介護5で15%を算定すると、基本報酬31,408単位+4,711単位で36,119単位。限度額36,217単位にほぼ届きます。福祉用具貸与などの併用余地がなくなる点に注意してください。
- 事業所の所在地が告示120号の地域か(15%)
- 該当しない場合、告示83号第1号の地域か(10%)
- 15%と10%を重複して算定していないか
- 5%は利用者の居住地と通常の事業の実施地域の両方を確認したか
- 運営規程の実施地域が実態に合っているか
- 市町村長への届出を済ませているか(15%・10%)
- 区分支給限度基準額に収まるか
よくある質問
看多機の地域加算は何種類ありますか?
3種類です。特別地域看護小規模多機能型居宅介護加算15%、中山間地域等における小規模事業所加算10%、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算5%です。
15%と10%は両方算定できますか?
できません。告示83号第1号は、告示120号の地域を除いた地域を対象としているため、対象地域が重なりません。
15%の対象地域は?
離島振興対策実施地域、奄美群島、振興山村、小笠原諸島、沖縄の離島、豪雪地帯等のうち厚生労働大臣が別に定めるものです(告示120号)。
10%の対象地域は?
豪雪地帯・特別豪雪地帯、辺地、半島振興対策実施地域、特定農山村地域、過疎地域です。ただし告示120号の地域は除かれます(告示83号第1号)。
5%はどう判定しますか?
利用者の居住地が告示83号第2号の地域にあり、かつ通常の事業の実施地域を越えてサービスを行った場合です。事業所の所在地では判定しません。
実施地域内の利用者にも5%を算定できますか?
できません。条文は「通常の事業の実施地域を越えて」と明記しています。
短期利用にも加算されますか?
10%の加算だけ「ロについては1日につき」と定められています。15%と5%は「イについて」に限定されています。
過疎地域なら必ず対象になりますか?
10%では対象になり得ますが、15%の六の区分は「厚生労働大臣が別に定めるもの」に限られます。市町村に確認してください。
15%と5%は併算定できますか?
注11に除外規定はありませんが、条文からは断定できません。市町村に確認してください。
何に率を乗じますか?
所定単位数です。基本報酬だけでなく、その月に算定した加算も含まれます。
届出は必要ですか?
15%と10%は市町村長への届出が要件に含まれます。5%には条文上の届出の定めがありません。
限度額に影響しますか?
します。要介護5で15%を算定すると基本報酬と合わせて36,119単位となり、区分支給限度基準額36,217単位にほぼ達します。
- 看多機の地域加算は15%・10%・5%の3種類
- 15%は特別地域看護小規模多機能型居宅介護加算(注9)で事業所の所在地で判定
- 10%は中山間地域等における小規模事業所加算(注10)で事業所の所在地で判定
- 5%は中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算(注11)で利用者の居住地で判定
- 15%の対象地域は告示120号、10%は告示83号第1号、5%は告示83号第2号
- 告示83号第1号は告示120号の地域を除いているため、15%と10%は重ならない
- 10%の対象は豪雪地帯・辺地・半島振興対策実施地域・特定農山村地域・過疎地域
- 5%の対象は10区分あり、10%の対象より広い
- 5%だけ「通常の事業の実施地域を越えて」が要件
- 運営規程の実施地域の設定が5%の算定可否を左右する
- 短期利用居宅介護費に加算されるのは10%だけ
- 15%と10%は市町村長への届出が必要、5%には条文上の定めがない
- いずれも所定単位数に乗じるため、他の加算にも率が乗る
- 要介護5で15%を算定すると区分支給限度基準額をほぼ使い切る
- 旧過疎地域の経過措置は令和6年3月31日で終了している
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」注9、注10、注11、イ、ロ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める地域(平成24年3月13日厚生労働省告示第120号)一〜六(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(平成21年3月13日厚生労働省告示第83号)第1号・第2号(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第182条において準用する第81条第6号(通常の事業の実施地域)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の加算率・対象地域は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに告示120号第六号の「厚生労働大臣が別に定めるもの」に自地域が含まれるか、15%または10%を算定している事業所が5%も算定できるか、「その一部として使用される事務所」の範囲については告示本文だけでは確定できず、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。記事中の金額は基本報酬のみに率を乗じた概算であり、実際は所定単位数に乗じるため異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。



