看多機の若年性認知症利用者受入加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の若年性認知症利用者受入加算は、1月につき800単位です。要件は「受け入れた若年性認知症利用者ごとに個別の担当者を定めていること」の1つだけで、看多機の加算のなかでは最も要件が少ない部類に入ります。
ただし落とし穴があります。認知症加算を算定していると、この加算は算定できません。どちらか一方しか取れないため、事業所の体制によっては有利・不利が逆転します。届出をしていない事業所ほど、この比較が効いてきます。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のヘと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第18号の原文を確認して整理しました。
- 若年性認知症利用者受入加算800単位の算定要件
- 要件は「個別の担当者を定めること」の1つだけであること
- 「若年性認知症利用者」の法令上の定義(65歳未満とは書かれていない)
- 認知症加算と併算定できないこと
- どちらを算定するほうが有利かの比較
- 65歳になった後の取扱い
- 「個別の担当者」に資格要件がないこと
- 他サービスの同名加算と要件が共通であること
ちびウルフ担当者を決めるだけで800単位ですか? ずいぶん要件が軽い気がします。
リハウルフ条文上はそのとおりです。ただ評価しているのは担当者を置く手間ではなく、若年性認知症の方を受け入れること自体だと考えたほうが正確です。就労、子どもの学費、住宅ローン。高齢の認知症の方とは相談の中身がまったく違います。その難しさに向き合う事業所を後押しする加算です。
看多機の若年性認知症利用者受入加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の若年性認知症利用者受入加算は、若年性認知症の方を受け入れ、その方ごとに個別の担当者を定めてサービスを提供した場合に算定する加算です。告示126号 複合型サービス費のヘに規定されています。
若年性認知症の方は、介護保険の利用者全体から見ればごく少数です。現役世代であることが多く、本人も家族も就労や経済面の課題を同時に抱えます。一般的な高齢者向けのプログラムがそのままでは合わないことも多い。受け入れる側には、個別性の高い対応が求められます。
この加算は、そうした受入れを事業所が敬遠しないよう、報酬面から支える位置づけです。看多機だけでなく、通所介護・ショートステイ・小多機・グループホームなど多くのサービスに横断的に置かれています。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。
若年性認知症利用者受入加算の単位数
ヘ 若年性認知症利用者受入加算 800単位
注 イについては、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所において、若年性認知症利用者に対して指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。ただし、ニを算定している場合は、算定しない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 800単位 |
| 算定頻度 | 1月につき |
| 対象 | イ(看護小規模多機能型居宅介護費) |
| 届出 | 市町村長への届出が必要 |
| 併算定 | ニ(認知症加算)を算定している場合は算定しない |
基本報酬に対する比率
| 要介護度 | 基本報酬 | 加算を加えた場合 | 上乗せ率 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 13,247単位 | 約6.4% |
| 要介護3 | 24,481単位 | 25,281単位 | 約3.3% |
| 要介護5 | 31,408単位 | 32,208単位 | 約2.5% |
若年性認知症利用者受入加算の算定要件
要件は1つだけ
十八 通所介護費、通所リハビリテーション費、短期入所生活介護費、(略)小規模多機能型居宅介護費、認知症対応型共同生活介護費、看護小規模多機能型居宅介護費(略)における若年性認知症利用者受入加算の基準
受け入れた若年性認知症利用者(介護保険法施行令第2条第6号に規定する初老期における認知症によって要介護者又は要支援者となった者をいう。)ごとに個別の担当者を定めていること。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①対象者 | 介護保険法施行令第2条第6号に規定する初老期における認知症によって要介護者または要支援者となった者 |
| ②個別の担当者 | 受け入れた若年性認知症利用者ごとに個別の担当者を定めていること |
| ③届出 | 市町村長への届出 |
「若年性認知症利用者」は特定疾病から定義されている
ここは実務で誤解が生じやすいところです。告示は「65歳未満」とは書いていません。引いているのは介護保険法施行令第2条第6号、いわゆる16の特定疾病のうちの「初老期における認知症」です。
特定疾病は、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)が介護保険の給付を受けるための要件です。したがってこの加算の対象になるのは、初老期における認知症を特定疾病として要介護認定を受けた方ということになります。
65歳になった後はどうなるか
特定疾病として認定を受けた方が65歳になると、第1号被保険者に切り替わります。この場合にこの加算を算定し続けられるかは、告示本文からは読み取れません。他サービスの留意事項通知では、65歳に達した後も引き続き算定できる旨が示されている例がありますが、看多機の取扱いは市町村に確認してください。
「個別の担当者」に資格要件はない
条文は「個別の担当者を定めていること」とだけ定めており、職種・資格・経験年数の指定はありません。介護職員でも看護職員でも介護支援専門員でも、条文上は差し支えありません。
ただし「定めていること」なので、記録に残す必要があります。看護小規模多機能型居宅介護計画や運営記録に担当者名を明記してください。実地指導で最初に確認されるのはここです。
認知症加算とどちらを算定するか
ヘのただし書きにより、認知症加算(ニ)を算定している月はこの加算を算定できません。若年性認知症の方が認知症加算の対象にも該当する場合、どちらか有利なほうを選ぶことになります。
| 算定できる認知症加算の区分 | 単位数 | 若年性認知症利用者受入加算(800単位)との比較 |
|---|---|---|
| 認知症加算(Ⅰ) | 920単位 | 認知症加算が120単位有利 |
| 認知症加算(Ⅱ) | 890単位 | 認知症加算が90単位有利 |
| 認知症加算(Ⅲ) | 760単位 | 若年性認知症利用者受入加算が40単位有利 |
| 認知症加算(Ⅳ) | 460単位 | 若年性認知症利用者受入加算が340単位有利 |
認知症加算(Ⅰ)(Ⅱ)は体制の届出が必要な区分です。体制を届け出ている事業所は認知症加算が有利、届け出ていない事業所は若年性認知症利用者受入加算が有利という、きれいな分かれ方になっています。
担当したケースでも、若年性認知症の方の受入れにあたって「認知症加算の届出をしていないなら、こちらを取ったほうが高い」と整理したことがあります。加算名だけで判断せず、自事業所がどの区分まで算定できるかを先に確認してください。
他サービスの同名加算との関係
| 項目 | 看多機 | 小多機・通所介護・ショートステイ等 |
|---|---|---|
| 基準の条文 | 告示95号 第18号 | 同じ条文 |
| 要件 | 個別の担当者を定めていること | 同じ |
| 単位数 | 800単位/月 | サービスにより異なる(通所介護は60単位/日など) |
告示95号 第18号は、通所介護・通所リハ・ショートステイ・小多機・グループホーム・看多機などをまとめて列挙した共通の条文です。要件はどのサービスでも同じですが、単位数と算定の単位(1日/1月)はサービスごとに違います。
若年性認知症利用者受入加算の注意点
要介護認定の根拠を確認する
対象者は「初老期における認知症によって要介護者または要支援者となった者」です。65歳未満というだけでは足りず、特定疾病として初老期における認知症で認定を受けていることが必要です。介護保険被保険者証と認定結果を確認してください。
短期利用居宅介護費には加算されない
ヘの注は「イについては」と書かれています。対象は看護小規模多機能型居宅介護費であり、短期利用居宅介護費には加算されません。
担当者の変更
担当者が退職・異動した場合の取扱いについて、告示に定めはありません。後任を定めて記録を更新すれば足りると考えられますが、空白期間が生じないよう運用してください。
認知症加算との切り替え
月ごとにどちらを算定するかを選べるのか、期の途中で切り替えられるのかは告示から読み取れません。とくに認知症加算(Ⅰ)(Ⅱ)の届出を新たに行った月の取扱いは、市町村に確認してください。
- 市町村長への届出を済ませているか
- 特定疾病「初老期における認知症」で要介護認定を受けているか
- その方ごとに個別の担当者を定め、記録に残しているか
- 認知症加算を算定していないか(算定していればこの加算は不可)
- 自事業所が算定できる認知症加算の区分と800単位を比較したか
- 65歳に達した方の取扱いを市町村に確認したか
よくある質問
看多機の若年性認知症利用者受入加算はいくらですか?
1月につき800単位です。
算定要件は何ですか?
受け入れた若年性認知症利用者ごとに個別の担当者を定めていることです。あわせて市町村長への届出が必要です。
「若年性認知症利用者」とは何歳の方ですか?
告示は年齢ではなく、介護保険法施行令第2条第6号の「初老期における認知症」によって要介護者または要支援者となった者と定義しています。特定疾病として認定を受けていることが前提です。
65歳になったら算定できなくなりますか?
告示本文からは読み取れません。他サービスでは65歳到達後も算定できる旨が示されている例がありますが、看多機の取扱いは市町村に確認してください。
担当者に資格は必要ですか?
条文に職種・資格の指定はありません。ただし担当者を定めたことを記録に残す必要があります。
認知症加算と併算定できますか?
できません。ヘの注は「ニを算定している場合は、算定しない」と定めています。
認知症加算とどちらが有利ですか?
認知症加算(Ⅰ)920単位・(Ⅱ)890単位なら認知症加算が有利です。(Ⅲ)760単位・(Ⅳ)460単位ならこの加算800単位が有利です。
体制の届出をしていない事業所はどうすべきですか?
認知症加算は(Ⅲ)(Ⅳ)しか算定できないため、若年性認知症の方についてはこの加算のほうが高くなります。
短期利用の利用者にも算定できますか?
できません。ヘの注は「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。
担当者が退職した場合は?
告示に定めはありません。後任を定めて記録を更新し、空白期間が生じないよう運用してください。
他のサービスと要件は同じですか?
同じです。告示95号第18号は通所介護・ショートステイ・小多機・グループホーム・看多機などに共通の条文です。単位数と算定の単位はサービスごとに異なります。
1人受け入れれば事業所全体で算定できますか?
できません。対象となる利用者ごとに算定する加算です。
- 看多機の若年性認知症利用者受入加算は1月につき800単位
- 対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)で、短期利用は対象外
- 要件は「受け入れた若年性認知症利用者ごとに個別の担当者を定めていること」の1つ
- あわせて市町村長への届出が必要
- 対象者は介護保険法施行令第2条第6号「初老期における認知症」による要介護者・要支援者
- 告示に「65歳未満」という文言はなく、特定疾病から定義されている
- 65歳到達後の取扱いは告示から読み取れず、市町村の取扱いによる
- 「個別の担当者」に職種・資格の指定はない
- 担当者を定めたことを記録に残す必要がある
- 認知症加算(ニ)を算定している月は算定できない
- 認知症加算(Ⅰ)920単位・(Ⅱ)890単位なら認知症加算が有利
- 認知症加算(Ⅲ)760単位・(Ⅳ)460単位ならこの加算800単位が有利
- 体制の届出をしていない事業所ほど、この加算のほうが高くなる
- 要件は他サービスと共通の条文(告示95号第18号)で定められている
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ヘ、ニ、イ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第18号(若年性認知症利用者受入加算の基準)、第54号の5(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに65歳に達した後の算定可否、認知症加算との切り替えの時期、担当者が変更となった場合の取扱いについては告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




