看多機の認知症加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の認知症加算は、令和6年度介護報酬改定で(Ⅰ)920単位・(Ⅱ)890単位・(Ⅲ)760単位・(Ⅳ)460単位の4区分に再編されました。いずれも1月につき算定します。
4区分といっても、性質は2つに割れています。(Ⅰ)(Ⅱ)は事業所の体制を評価する新設区分、(Ⅲ)(Ⅳ)は従来からある利用者の状態による区分です。届出の要否も、条文の根拠も違います。ここを混ぜて読むと、算定できるはずの920単位を取り逃します。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のニ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第54号の5、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(同第94号)第52号・第38号の原文を確認して整理しました。
- 認知症加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)の単位数と、改定前後の対応関係
- (Ⅰ)(Ⅱ)=体制の区分、(Ⅲ)(Ⅳ)=状態の区分という構造
- (Ⅰ)の4要件と(Ⅱ)の2要件
- 専門研修修了者の必要人数の計算式(対象者20人未満なら1以上)
- (Ⅲ)(Ⅳ)の対象者と、(Ⅳ)が要介護2限定であること
- (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のいずれかを算定すると他は算定できないこと
- 若年性認知症利用者受入加算800単位が算定できなくなること
- 小規模多機能型居宅介護と基準が共通であること
ちびウルフ(Ⅰ)920単位と(Ⅲ)760単位、160単位しか違わないですよね。体制を整える意味はあるんですか?
リハウルフそこが誤解されやすいところです。(Ⅰ)(Ⅱ)と(Ⅲ)は、同じ対象者に対する上乗せではなく択一です。体制を整えれば(Ⅰ)920単位、整えなければ(Ⅲ)760単位。同じ利用者で1人あたり月160単位、20人なら年間約38万円の差になります。
看多機の認知症加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の認知症加算は、認知症の方への専門的なケアを評価する加算です。告示126号 複合型サービス費のニに規定されています。
看多機の基本報酬は要介護度別の月額包括です。認知症の症状があっても要介護度が低ければ報酬は上がりません。しかし日常生活に支障を来す症状・行動がある方への支援は、身体介助の量では測れない負担があります。その差を埋めるのがこの加算です。
令和6年度介護報酬改定で、従来の2区分が4区分に組み替えられました。単なる増額ではなく、事業所の体制を評価する区分を上に積み増し、従来の区分は少し引き下げるという構成です。
認知症加算の単位数
ニ 認知症加算
(1) 認知症加算(Ⅰ) 920単位/(2) 認知症加算(Ⅱ) 890単位/(3) 認知症加算(Ⅲ) 760単位/(4) 認知症加算(Ⅳ) 460単位
注1 イについては、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所において、別に厚生労働大臣が定める登録者に対して専門的な認知症ケアを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、(1)及び(2)について1月につきそれぞれ所定単位数を加算する。ただし、(1)、(2)又は(3)のいずれかの加算を算定している場合は、その他の加算は算定しない。
注2 イについては、別に厚生労働大臣が定める登録者に対して指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、(3)及び(4)について1月につきそれぞれ所定単位数を加算する。
| 区分 | 単位数 | 根拠 | 評価しているもの | 届出 |
|---|---|---|---|---|
| 認知症加算(Ⅰ) | 920単位 | 注1 | 事業所の体制 | 必要 |
| 認知症加算(Ⅱ) | 890単位 | 注1 | 事業所の体制 | 必要 |
| 認知症加算(Ⅲ) | 760単位 | 注2 | 利用者の状態 | 不要 |
| 認知症加算(Ⅳ) | 460単位 | 注2 | 利用者の状態 | 不要 |
令和6年度改定での組み替え
| 改定後 | 改定前 | 増減 |
|---|---|---|
| 認知症加算(Ⅰ)920単位 | — | 新設 |
| 認知症加算(Ⅱ)890単位 | — | 新設 |
| 認知症加算(Ⅲ)760単位 | (Ⅰ)800単位 | △40単位 |
| 認知症加算(Ⅳ)460単位 | (Ⅱ)500単位 | △40単位 |
従来どおりの体制のままだと、40単位のマイナスになります。体制を整えて(Ⅰ)に上げれば160単位のプラス。改定は「体制整備に動かないと減る」という設計になっています。
認知症加算の算定要件
(Ⅰ)(Ⅱ)=事業所の体制(告示95号 第54号の5)
| 要件 | 内容 | (Ⅰ) | (Ⅱ) |
|---|---|---|---|
| (1) 専門研修修了者の配置とチームケア | 認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を必要数配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施 | ○ | ○ |
| (2) 会議の定期開催 | 従業者に対する認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催 | ○ | ○ |
| (3) 指導者の配置 | 認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施 | ○ | — |
| (4) 研修計画 | 介護職員・看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、計画に従い研修を実施または実施予定 | ○ | — |
(Ⅱ)は(1)(2)の2つ、(Ⅰ)はこれに(3)(4)を加えた4つです。差は30単位(920−890)ですが、(3)の指導者の確保は時間がかかります。
専門研修修了者は何人必要か
(1)の必要人数は、対象者の数で決まります。
| 対象者の数 | 必要な専門研修修了者 |
|---|---|
| 20人未満 | 1以上 |
| 20人以上 | 1に、対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えて得た数以上 |
ここでいう対象者は、日常生活に支障を来すおそれのある症状または行動が認められることから介護を必要とする認知症の者です。登録者全員ではありません。
- 対象者15人 → 1人以上
- 対象者20人 → 1+(20−19=1、10の端数で1)=2人以上
- 対象者29人 → 1+(29−19=10、10で1)=2人以上
- 対象者30人 → 1+(30−19=11、10とその端数で2)=3人以上
看多機の登録定員は原則29人以下なので、実務上は「対象者20人未満なら1人、20人以上なら2人」で足りる場面がほとんどだと思います。
(Ⅲ)(Ⅳ)=利用者の状態(告示94号 第52号→第38号)
| 区分 | 対象となる登録者 |
|---|---|
| (Ⅲ)760単位 ((Ⅰ)(Ⅱ)も同じ対象) | 日常生活に支障を来すおそれのある症状または行動が認められることから介護を必要とする認知症の者 |
| (Ⅳ)460単位 | 要介護状態区分が要介護2である者であって、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症のもの |
(Ⅳ)は要介護2の方に限られます。要介護1でも要介護3でも算定できません。ここは条文が明確です。
(Ⅲ)と(Ⅳ)の違いは、症状・行動により「介護を必要とする」レベルか、「注意を必要とする」レベルかです。前者のほうが重く、単位数も高い。実務では日常生活自立度の認知症加算の判定に照らして整理することになりますが、告示本文に自立度の区分は書かれていません。市町村の取扱いを確認してください。
併算定できないもの
(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は択一
注1のただし書きは「(1)、(2)又は(3)のいずれかの加算を算定している場合は、その他の加算は算定しない」としています。
| 算定している区分 | 他に算定できるか |
|---|---|
| (Ⅰ)920単位 | (Ⅱ)(Ⅲ)は算定できない |
| (Ⅱ)890単位 | (Ⅰ)(Ⅲ)は算定できない |
| (Ⅲ)760単位 | (Ⅰ)(Ⅱ)は算定できない |
体制が整っている事業所は(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定し、(Ⅲ)は算定しません。(Ⅲ)は体制の届出をしていない事業所のための区分と理解すると整理しやすくなります。
若年性認知症利用者受入加算800単位は算定できなくなる
ヘ(若年性認知症利用者受入加算)の注は「ただし、ニを算定している場合は、算定しない」と定めています。
| 算定する加算 | 単位数(1月) | 差 |
|---|---|---|
| 認知症加算(Ⅰ) | 920単位 | +120単位 |
| 認知症加算(Ⅱ) | 890単位 | +90単位 |
| 認知症加算(Ⅲ) | 760単位 | △40単位 |
| 認知症加算(Ⅳ) | 460単位 | △340単位 |
| 若年性認知症利用者受入加算 | 800単位 | 基準 |
若年性認知症の方については、どちらが有利かを個別に判断する必要があります。(Ⅲ)や(Ⅳ)しか算定できない事業所では、若年性認知症利用者受入加算のほうが高くなります。体制の届出をしていない事業所ほど、この比較が効いてきます。
小規模多機能型居宅介護との違い
| 項目 | 看多機 | 小多機 |
|---|---|---|
| 単位数 | 920/890/760/460単位 | 同じ |
| 体制の基準 | 告示95号 第54号の5 | 同じ条文 |
| 対象登録者 | 告示94号第52号→第38号 | 第38号 |
告示95号 第54号の5は「小規模多機能型居宅介護費及び看護小規模多機能型居宅介護費における認知症加算の基準」という見出しで、両サービスに共通の条文です。両方を運営している法人でも、認知症加算については取扱いを分ける必要がありません。
認知症加算の注意点
「専門的な研修」の範囲
(1)の「認知症介護に係る専門的な研修」、(3)の「認知症介護の指導に係る専門的な研修」がどの研修を指すかは、告示本文に列挙がありません。実務では認知症介護実践リーダー研修・認知症介護指導者養成研修などが想定されますが、告示からは確定できません。留意事項通知および市町村の取扱いを確認してください。
「専門的な認知症ケアを行った場合」
注1は「別に厚生労働大臣が定める登録者に対して専門的な認知症ケアを行った場合」としています。体制の届出をしていれば自動的に算定できるのではなく、対象の登録者に対して実際にケアを行っていることが前提です。看護小規模多機能型居宅介護計画への位置づけと記録を残してください。
対象者の数は変動する
専門研修修了者の必要人数は対象者の数で決まるため、登録者の入れ替わりで必要数が変わります。対象者が19人から20人に増えた月に、配置が1人のままだと要件を満たしません。月ごとの確認が要ります。
短期利用居宅介護費には加算されない
ニの注1・注2はいずれも「イについては」と書かれています。対象は看護小規模多機能型居宅介護費であり、短期利用居宅介護費には加算されません。
- (Ⅰ)(Ⅱ)を算定するなら市町村長への届出を済ませているか
- 対象者の数に対して専門研修修了者が足りているか
- (Ⅰ)なら指導に係る研修の修了者を1名以上配置しているか
- 認知症ケアに関する会議を定期的に開催した記録があるか
- (Ⅳ)の対象者が要介護2であることを確認したか
- 若年性認知症の方について、どちらの加算が有利か比較したか
よくある質問
看多機の認知症加算はいくらですか?
(Ⅰ)920単位、(Ⅱ)890単位、(Ⅲ)760単位、(Ⅳ)460単位です。いずれも1月につき算定します。
令和6年度改定で何が変わりましたか?
2区分から4区分になりました。(Ⅰ)920単位・(Ⅱ)890単位が新設され、従来の800単位・500単位は(Ⅲ)760単位・(Ⅳ)460単位に組み替えられています。
(Ⅰ)〜(Ⅳ)の違いは何ですか?
(Ⅰ)(Ⅱ)は事業所の体制を評価する区分で届出が必要です。(Ⅲ)(Ⅳ)は利用者の状態による区分で、届出は不要です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?
(Ⅱ)は専門研修修了者の配置とチームケア、会議の定期開催の2要件です。(Ⅰ)はこれに指導者の配置と研修計画の作成が加わります。
専門研修修了者は何人必要ですか?
対象者が20人未満なら1以上、20人以上なら1に、対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えた数以上です。
対象者とは登録者全員のことですか?
違います。日常生活に支障を来すおそれのある症状または行動が認められることから介護を必要とする認知症の方です。
(Ⅳ)は誰が対象ですか?
要介護状態区分が要介護2である方で、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の方です。要介護2以外は対象になりません。
(Ⅰ)と(Ⅲ)を両方算定できますか?
できません。注1のただし書きにより、(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のいずれかを算定している場合は他を算定できません。
若年性認知症利用者受入加算と併算定できますか?
できません。ヘの注は「ニを算定している場合は、算定しない」と定めています。どちらが有利か個別に比較してください。
体制を届け出れば自動的に算定できますか?
できません。対象の登録者に対して専門的な認知症ケアを行っていることが前提です。
小多機と基準は違いますか?
同じです。告示95号第54号の5は小規模多機能型居宅介護費と看護小規模多機能型居宅介護費に共通の条文です。
短期利用の利用者にも算定できますか?
できません。ニの注1・注2はいずれも「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。
- 看多機の認知症加算は(Ⅰ)920単位・(Ⅱ)890単位・(Ⅲ)760単位・(Ⅳ)460単位
- 令和6年度改定で2区分から4区分に再編された
- (Ⅰ)(Ⅱ)は新設、(Ⅲ)(Ⅳ)は従来の800・500単位から各40単位の引き下げ
- (Ⅰ)(Ⅱ)は事業所の体制を評価する区分で届出が必要
- (Ⅲ)(Ⅳ)は利用者の状態による区分で届出は不要
- (Ⅱ)は専門研修修了者の配置とチームケア、会議の定期開催の2要件
- (Ⅰ)はこれに指導に係る研修修了者の配置と研修計画が加わる4要件
- 専門研修修了者は対象者20人未満で1以上、20人以上で計算式による
- 対象者は登録者全員ではなく、介護を必要とする認知症の方
- (Ⅳ)は要介護2の方に限られる
- (Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は択一で、併算定できない
- 認知症加算を算定すると若年性認知症利用者受入加算800単位は算定できない
- (Ⅲ)(Ⅳ)しか算定できない事業所では若年性認知症利用者受入加算のほうが高い
- 体制の届出だけでは足りず、実際に専門的な認知症ケアを行っていることが前提
- 体制の基準は小規模多機能型居宅介護と共通の条文
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ニ、ヘ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第54号の5(小規模多機能型居宅介護費及び看護小規模多機能型居宅介護費における認知症加算の基準)、第18号(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年3月23日厚生労働省告示第94号)第52号、第38号(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに「認知症介護に係る専門的な研修」「認知症介護の指導に係る専門的な研修」に該当する研修の範囲、対象者の判定方法(認知症高齢者の日常生活自立度との対応)、対象者数の算定基準日については告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




