看多機のターミナルケア加算とは?算定要件やポイントを解説

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)のターミナルケア加算は、死亡月に2,500単位です。看多機の加算のなかで、1回あたりの金額としては看護体制強化加算に次ぐ大きさになります。
算定できるかどうかを分けるのは、「死亡日および死亡日前14日以内に2日以上」ターミナルケアを行ったかどうか。ただし末期の悪性腫瘍等に該当する方は「1日以上」に緩和されます。この2日と1日の差が、実務では算定の可否をそのまま決めることがあります。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のヨ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第77号、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(同第94号)第55号・第8号の原文を確認して整理しました。
- ターミナルケア加算2,500単位の算定要件
- 「死亡日前14日以内に2日以上」の数え方
- 1日以上でよい「末期の悪性腫瘍その他の状態」の中身
- 24時間連絡体制・同意・記録という3つの体制要件
- ターミナルケア後24時間以内に別の場所で死亡した場合も算定できること
- 看護体制強化加算(Ⅰ)の要件(前12月間に1名以上)との関係
- 末期がんで医療保険の訪問看護が入る月の報酬の動き
- 訪問看護のターミナルケア加算との違い
ちびウルフ看多機は泊まりもできますよね。事業所で亡くなった場合も算定できるんですか?
リハウルフできます。条文は「在宅又は指定看護小規模多機能型居宅介護事業所で死亡した利用者に対して」と書いています。泊まりの最中に看取ることも想定されている。ここは訪問看護のターミナルケア加算にはない、看多機ならではの部分です。
看多機のターミナルケア加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護のターミナルケア加算は、在宅または看多機事業所で亡くなった利用者に対して、死亡前の一定期間にターミナルケアを行った場合に、死亡月に算定する加算です。告示126号 複合型サービス費のヨに規定されています。
看多機の基本報酬は要介護度別の月額包括です。看取りの局面では訪問の頻度も夜間の対応も跳ね上がりますが、基本報酬はそれを反映しません。その手間を死亡月にまとめて評価するのがこの加算です。
算定は死亡月の1回限りです。ターミナルケアを何日行っても額は変わらず、日数に応じて増えることはありません。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。なお同じ改定で遠隔死亡診断補助加算が看多機にも設けられており、看取りの体制整備は継続的な論点になっています。
ターミナルケア加算の単位数
ヨ ターミナルケア加算 2,500単位
注 イについては、在宅又は指定看護小規模多機能型居宅介護事業所で死亡した利用者に対して、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が、その死亡日及び死亡日前14日以内に2日(死亡日及び死亡日前14日以内に当該利用者(末期の悪性腫瘍その他別に厚生労働大臣が定める状態にあるものに限る。)に訪問看護を行っている場合にあっては、1日)以上ターミナルケアを行った場合(ターミナルケアを行った後、24時間以内に在宅又は指定看護小規模多機能型居宅介護事業所以外の場所で死亡した場合を含む。)は、当該利用者の死亡月につき所定単位数を加算する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 2,500単位 |
| 算定頻度 | 死亡月につき1回 |
| 対象 | イ(看護小規模多機能型居宅介護費) |
| 死亡の場所 | 在宅または看多機事業所 |
| 届出 | 市町村長への届出が必要 |
基本報酬に対する比率
| 要介護度 | 基本報酬 | 加算を加えた場合 | 上乗せ率 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 14,947単位 | 約20% |
| 要介護3 | 24,481単位 | 26,981単位 | 約10% |
| 要介護5 | 31,408単位 | 33,908単位 | 約8% |
ターミナルケア加算の算定要件
日数要件は「2日以上」が原則
| 利用者の状態 | 必要なターミナルケアの日数 | 期間 |
|---|---|---|
| 原則 | 2日以上 | 死亡日および死亡日前14日以内 |
| 末期の悪性腫瘍その他厚生労働大臣が定める状態 | 1日以上 | 同上 |
「死亡日及び死亡日前14日以内」なので、死亡日を含めて最大15日間が対象期間です。この期間内に必要な日数のターミナルケアを行っていれば要件を満たします。
1日以上でよい「厚生労働大臣が定める状態」
告示94号 第55号は、この状態について第8号を引いています。第8号の内容は次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| イ | 多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頚髄損傷、人工呼吸器を使用している状態 |
| ロ | 急性増悪その他当該利用者の主治の医師が一時的に頻回の訪問看護が必要であると認める状態 |
条文の書き方は「末期の悪性腫瘍その他別に厚生労働大臣が定める状態」です。末期の悪性腫瘍は当然に含まれ、加えて上の表の状態が対象になります。ALSや人工呼吸器使用の方も1日以上でよいというのは、見落とされやすいところです。
なお条文は「訪問看護を行っている場合にあっては」と限定しています。1日以上への緩和を受けるには、対象期間内に訪問看護を実施している必要があります。
体制要件(告示95号 第77号→第8号を準用)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| イ 24時間連絡体制 | ターミナルケアを受ける利用者について24時間連絡できる体制を確保し、必要に応じてサービスを行える体制を整備していること |
| ロ 説明と同意 | 主治の医師との連携の下に、ターミナルケアに係る計画および支援体制について利用者・家族等に説明し、同意を得てターミナルケアを行っていること |
| ハ 記録 | ターミナルケアの提供について、利用者の身体状況の変化等必要な事項が適切に記録されていること |
3つとも実地指導で確認されます。とくにロの「主治の医師との連携の下に」という文言は重要です。看護職員の判断だけでターミナルケア計画を立てても要件を満たしません。医師との連携の記録を残してください。
24時間以内に別の場所で亡くなった場合
条文のかっこ書きは、ターミナルケアを行った後24時間以内に、在宅・事業所以外の場所で死亡した場合を含むとしています。
在宅で看取る方針で支援していたが、最期の局面で救急搬送され病院で亡くなった、というケースがこれにあたります。24時間以内であれば算定できます。ここを知らずに算定を見送っている事業所は少なくないと思います。
担当したケースでも、深夜に状態が急変して搬送され、翌朝に病院で亡くなった方がいました。前日までのターミナルケアの記録がそろっていたので、24時間以内の要件を確認して算定しています。搬送=算定不可、と反射的に判断しないでください。
看護体制強化加算(Ⅰ)との関係
看多機のターミナルケア加算には、単体の2,500単位以外の意味があります。
| 規定 | ターミナルケア加算の使われ方 | 影響額 |
|---|---|---|
| 看護体制強化加算(Ⅰ) | 算定日が属する月の前12月間に算定した利用者が1名以上 | (Ⅱ)2,500単位との差=500単位/月 |
1年間に1件でも看取れば、その後1年間は(Ⅰ)の要件(4)を満たし続けます。逆に1年間看取りがなければ(Ⅰ)3,000単位から(Ⅱ)2,500単位に落ちます。登録者20人の事業所なら年間120万円の差です。
末期がんで医療保険の訪問看護が入る月の動き
末期の悪性腫瘍の方については、主治医が訪問看護を行う必要がある旨の指示をすると、注15により基本報酬が減算されます。死亡月には次のような動きになります。
| 要介護度 | 基本報酬 | 注15の減算 | ターミナルケア加算 | 差引 |
|---|---|---|---|---|
| 要介護3 | 24,481単位 | △925単位 | +2,500単位 | 26,056単位 |
| 要介護5 | 31,408単位 | △2,914単位 | +2,500単位 | 30,994単位 |
要介護5では、減算額のほうがターミナルケア加算を上回ります。看取りの月は報酬が増えるとは限らないということです。訪問看護は医療保険から給付されるので事業所全体の収入としては別に立ちますが、介護給付の請求だけを見ていると読み違えます。
訪問看護のターミナルケア加算との違い
| 項目 | 看多機 | 訪問看護 |
|---|---|---|
| 単位数 | 2,500単位 | 2,500単位 |
| 死亡の場所 | 在宅または看多機事業所 | 在宅等 |
| 日数要件 | 死亡日前14日以内に2日以上(末期がん等は1日以上) | 同じ |
| 体制要件 | 告示95号第77号(第8号を準用) | 告示95号第8号 |
| 看護体制強化加算の要件 | (Ⅰ)は前12月間に1名以上 | (Ⅰ)は5名以上、(Ⅱ)は1名以上 |
単位数も日数要件も同じです。違うのは、看多機は事業所での看取りも対象になることと、看護体制強化加算の実績要件の人数です。
ターミナルケア加算の注意点
「ターミナルケアを行った日」の数え方
告示は「2日以上ターミナルケアを行った場合」とだけ定めており、1日に何をすればターミナルケアを行ったことになるかまでは書いていません。訪問の有無、時間、内容の判断は留意事項通知と保険者の取扱いによります。実務では、訪問記録にターミナルケアとしての位置づけを明記しておくのが安全です。
死亡月に算定するため請求が翌月以降になる
加算は死亡月につき算定します。月末に亡くなった場合、その月の請求に間に合わせる必要があるため、記録の整備を後回しにすると要件を示せなくなります。看取りの直後は事務が滞りやすい局面です。
短期利用居宅介護費には加算されない
ヨの注は「イについては」と書かれています。対象は看護小規模多機能型居宅介護費であり、短期利用居宅介護費には加算されません。
- 市町村長への届出を済ませているか
- 死亡日および死亡日前14日以内に必要な日数のケアを行ったか
- 末期の悪性腫瘍等に該当し、1日以上でよいケースではないか
- 主治医との連携のもとで計画を説明し、同意を得た記録があるか
- 身体状況の変化の記録が残っているか
- 搬送先で亡くなった場合、ターミナルケアから24時間以内か
よくある質問
看多機のターミナルケア加算はいくらですか?
2,500単位です。死亡月につき算定します。
何日ターミナルケアを行えば算定できますか?
死亡日および死亡日前14日以内に2日以上です。末期の悪性腫瘍その他厚生労働大臣が定める状態の方に訪問看護を行っている場合は1日以上に緩和されます。
1日以上でよい「厚生労働大臣が定める状態」とは何ですか?
告示94号第8号の状態です。ALS・多発性硬化症・パーキンソン病関連疾患など18の疾病等と人工呼吸器を使用している状態、および主治医が一時的に頻回の訪問看護が必要と認める状態が含まれます。
事業所の宿泊中に亡くなった場合も算定できますか?
できます。条文は「在宅又は指定看護小規模多機能型居宅介護事業所で死亡した利用者」と定めています。
病院に搬送されて亡くなった場合はどうなりますか?
ターミナルケアを行った後24時間以内に在宅・事業所以外の場所で死亡した場合も含むとされています。24時間を超えると対象外です。
日数に応じて単位数は増えますか?
増えません。死亡月につき2,500単位の1回限りです。
体制要件は何ですか?
24時間連絡できる体制の確保、主治医との連携のもとでの計画の説明と同意、身体状況の変化等の適切な記録の3つです。
看護体制強化加算とどう関係しますか?
看護体制強化加算(Ⅰ)は、前12月間にターミナルケア加算を算定した利用者が1名以上であることを要件としています。
末期がんの方の死亡月は報酬が増えますか?
必ずしも増えません。注15により要介護5では2,914単位が減算されるため、ターミナルケア加算2,500単位を加えても差引はマイナスになります。訪問看護は医療保険から給付されます。
短期利用の利用者にも算定できますか?
できません。ヨの注は「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。
届出は必要ですか?
必要です。市町村長に対し、老健局長が定める様式による届出を行った事業所が対象です。
ターミナルケアを行った日はどう数えますか?
告示本文に判断基準の定めはありません。留意事項通知および市町村の取扱いによりますので、訪問記録にターミナルケアとしての位置づけを明記しておいてください。
- 看多機のターミナルケア加算は死亡月につき2,500単位
- 対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)で、短期利用は対象外
- 在宅だけでなく看多機事業所で亡くなった場合も算定できる
- 日数要件は死亡日および死亡日前14日以内に2日以上
- 末期の悪性腫瘍その他告示94号第8号の状態は1日以上に緩和される
- 緩和を受けるには対象期間内に訪問看護を実施していることが必要
- ALS・人工呼吸器使用の方も1日以上の対象に含まれる
- ターミナルケア後24時間以内に他の場所で死亡した場合も算定できる
- 体制要件は24時間連絡体制・主治医との連携と同意・適切な記録の3つ
- 日数に応じて単位数が増えることはない
- 看護体制強化加算(Ⅰ)は前12月間に1名以上の算定実績を要件とする
- 1年間看取りがないと(Ⅰ)3,000単位から(Ⅱ)2,500単位に下がる
- 末期がんで医療保険の訪問看護が入る月は注15の減算が上回ることがある
- 単位数・日数要件は訪問看護のターミナルケア加算と同じ
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ヨ、レ、注15(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第77号(ターミナルケア加算の基準)、第8号(訪問看護費におけるターミナルケア加算の基準)、第78号(看護体制強化加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年3月23日厚生労働省告示第94号)第55号、第8号(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに「ターミナルケアを行った日」の判断基準、末期の悪性腫瘍の判定、24時間以内の起算点、死亡月の請求事務の取扱いについては告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




