小規模多機能型居宅介護には、体制の不備によって基本報酬が減る減算が3つあります。身体拘束廃止未実施減算・高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算です。

小多機では、この3つがすべて所定単位数の100分の1(1%)で統一されています。

これは他サービスと比べて特徴的です。グループホームや特養・老健では身体拘束廃止未実施減算が10%で、他の2つ(1%)と大きな差があります。小多機は3つとも1%で横並びです。

ただし率が小さいことと、指摘を受けないことは別の話です。3つとも「基準に適合していること」が要件であり、適合していなければ該当月以降ずっと減算が続きます。

この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費の注4〜6と、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)五十四の二〜五十四の四を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 3つの減算がいずれも1%であること
  • それぞれが参照する運営基準の条文
  • グループホーム等との減算率の違い
  • 身体拘束の記録が3年保存であること
  • 3つとも重複して減算される可能性があること
  • 届出ではなく「基準に適合しているか」で判定されること
ちびウルフちびウルフ

1%なら、要介護3で月220単位くらいですよね。あまり大きくない気がします。

リハウルフリハウルフ

金額は大きくありません。ただ3つとも該当すれば3%になりますし、登録者全員に月単位でかかり続けます。それ以上に問題なのは、この減算が「体制がない」という認定そのものだという点です。実地指導で指摘されれば、遡っての返還を求められる可能性もあります。

小規模多機能型居宅介護の3つの減算とは?

小規模多機能型居宅介護の身体拘束廃止未実施減算・高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算は、いずれも運営基準で義務づけられた体制が整っていない場合に、基本報酬から差し引かれる減算です。

この3つに共通するのは、「やっていないこと」に対する減算だという点です。加算のように届け出て取りに行くものではなく、基準に適合していなければ自動的に対象になります。

小多機は宿泊サービスがあり、認知症の登録者も多いサービスです。夜間の対応で身体拘束に当たる行為が生じうる環境にあり、この3つはいずれも実務と直結します。

3つの減算の減算率

減算減算率条文
身体拘束廃止未実施減算所定単位数の100分の1注4
高齢者虐待防止措置未実施減算所定単位数の100分の1注5
業務継続計画未策定減算所定単位数の100分の1注6

4 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、身体拘束廃止未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
5 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
6 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、業務継続計画未策定減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。

他サービスとの比較

サービス身体拘束虐待防止BCP
小規模多機能型居宅介護1%1%1%
グループホーム10%1%3%
特養・老健・介護医療院10%1%3%

身体拘束廃止未実施減算が10%になるのは、入所・入居系のサービスです。小多機は登録して在宅生活を支えるサービスであり、宿泊はその一部という位置づけのため1%にとどまっていると考えられます。(位置づけの解釈は筆者の理解です)

3つの減算の算定要件

身体拘束廃止未実施減算

基準は指定地域密着型サービス基準第73条第6号及び第7号への適合です。

  • 身体的拘束等を行う場合は、態様・時間・利用者の心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録すること
  • 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、結果を従業者に周知徹底すること
  • 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること
  • 従業者に対し、適正化のための研修を定期的に実施すること

記録・委員会・指針・研修の4点セットです。1つでも欠けると減算の対象になります。(各号の具体的内容は運営基準によります。詳細は原文をご確認ください)

高齢者虐待防止措置未実施減算

基準は指定地域密着型サービス基準第88条において準用する第3条の38の2への適合です。

  • 虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、結果を従業者に周知徹底すること
  • 虐待の防止のための指針を整備すること
  • 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
  • これらを適切に実施するための担当者を置くこと

業務継続計画未策定減算

基準は指定地域密着型サービス基準第88条において準用する第3条の30の2第1項への適合です。

  • 感染症の発生時における業務継続計画を策定していること
  • 非常災害の発生時における業務継続計画を策定していること
  • 計画に従い必要な措置を講じていること

感染症と災害の両方が必要です。どちらか一方しか策定していない場合は減算の対象になり得ます。

3つの減算の注意点

3つは重複する

注4・注5・注6はそれぞれ独立した規定です。3つとも基準を満たさない場合、3つとも減算されます。

要介護3(22,359単位)で3つとも該当すれば、月あたりおよそ670単位の減となります(1%=約224単位×3。端数処理は請求システムの取扱いによります)。

「作って終わり」では要件を満たさない

3つに共通するのは、委員会・指針・研修という体制の継続が求められている点です。

指針を作った年に研修を1回やって、その後何もしていない状態は、「定期的に実施している」とは言えません。実地指導では開催記録・研修記録・参加者名簿が確認されます。(実地指導の運用に関する記述は筆者の実務経験にもとづく整理です)

身体拘束の記録の保存期間

運営基準では、身体的拘束等の記録はその完結の日から2年間保存が原則ですが、市町村の条例で5年など長い期間を定めている場合があります。小多機は市町村が指定権者であるため、条例の定めを確認してください。

点検の進め方

  • 身体的拘束等適正化検討委員会の直近の開催記録を確認する
  • 虐待防止委員会の開催記録と担当者の指定を確認する
  • 指針が3つとも整備されているか確認する
  • 研修の年間計画と実施記録を確認する
  • BCPが感染症・災害の両方あるか確認する
  • 委員会は他の会議体と兼ねてよいか市町村に確認する

3つの減算のQ&A

小多機の身体拘束廃止未実施減算は10%ではないのですか?

小規模多機能型居宅介護は100分の1です。10%はグループホームや特養など入所・入居系のサービスです。

3つ同時に減算されることはありますか?

あります。注4・注5・注6はそれぞれ独立した規定です。

減算に届出は必要ですか?

加算のような届出ではなく、基準に適合していない場合に減算されるものです。該当した場合の届出の要否は市町村に確認してください。

身体拘束を一度も行っていなければ減算されませんか?

拘束の有無にかかわらず、委員会・指針・研修の体制が求められます。実施していなければ対象になり得ます。

委員会は他の会議と兼ねられますか?

取扱いは市町村によります。検討内容と結果の周知が記録上追えることが必要です。

BCPは感染症だけでよいですか?

感染症と非常災害の両方が求められます。

研修は年に何回必要ですか?

基準は「定期的に実施すること」としています。回数は市町村の取扱いを確認してください。

減算はいつからいつまで続きますか?

基準を満たさない状態が続く間が対象です。開始・終了の具体的な取扱いは市町村に確認してください。

まとめ
  • 小多機の3つの減算はいずれも所定単位数の100分の1
  • 身体拘束廃止未実施・高齢者虐待防止措置未実施・業務継続計画未策定の3つ
  • グループホームや特養は身体拘束が10%、BCPが3%で小多機とは異なる
  • 身体拘束は記録・委員会・指針・研修の4点が必要
  • 虐待防止は委員会・指針・研修・担当者の配置が必要
  • BCPは感染症と非常災害の両方が必要
  • 3つとも該当すれば重複して減算される
  • 届出で取る加算と違い、適合していなければ自動的に対象になる
  • 記録の保存期間は市町村の条例を確認する
参考にした情報
  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 小規模多機能型居宅介護費の注4、注5、注6(厚生労働省法令等データベース)
  • 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)五十四の二、五十四の三、五十四の四(厚生労働省法令等データベース)
  • 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第73条、第88条、第3条の30の2、第3条の38の2

※本記事の減算率・要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。運営基準の各号の具体的内容は省令の原文をご確認ください。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。委員会の開催頻度、他の会議体との兼務の可否、研修の回数、記録の保存期間、減算の開始・終了時期については所在市町村に確認してください。記事中の単位数の計算例は概算であり、端数処理により実際の請求額とは異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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