グループホームの身体拘束廃止未実施減算とは?

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の身体拘束廃止未実施減算は、本体(イ)が所定単位数の10%減、短期利用(ロ)が1%減です。同じ減算名で率が10倍違う、珍しい構造をしています。
10%は特養・老健と並ぶ最も重い水準です。要介護3・1ユニットの入居者(824単位/日)なら1日82単位、月にすると約2,470単位。9人ユニット全員に及べば月2万単位を超えます。
減算の根拠は指定地域密着型サービス基準第97条第6項・第7項。第6項が「記録」、第7項が「委員会・指針・研修」の3点セットです。拘束をしていない事業所でも、委員会を3か月に1回以上開いていなければ減算の対象になります。ここを誤解している事業所が今も残っています。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)認知症対応型共同生活介護費の注2、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第97条の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 身体拘束廃止未実施減算が本体10%・短期利用1%であること
- 減算の根拠が基準第97条第6項・第7項であること
- 拘束をしていなくても委員会・指針・研修が必要であること
- 委員会は3か月に1回以上、テレビ電話装置等の活用が可能であること
- 緊急やむを得ない場合の記録に何を残すか
- 減算額の実際の大きさ
- 高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算との違い
- 介護予防(要支援2)でも同じ率であること
ちびウルフうちは身体拘束をしていないので、関係ないですよね?
リハウルフそこが最大の誤解です。減算の要件は「拘束の有無」ではなく「適正化のための措置を講じているか」です。拘束ゼロでも、委員会を3か月に1回以上開いていなければ10%減算です。実地指導で最初に見られる書類のひとつでもあります。
本体10%、短期利用1%
告示126号の注2は、次のとおりです。
別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、身体拘束廃止未実施減算として、イについては所定単位数の100分の10に相当する単位数を、ロについては所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
| 対象 | 減算率 | 要介護3(824単位/日)の場合 |
|---|---|---|
| イ(本体入居) | 10% | 1日82単位減、月約2,470単位減 |
| ロ(短期利用) | 1% | 1日8単位減 |
※小数点以下の端数処理は請求時の取扱いによります。
減算の基準は第97条第6項・第7項
告示95号第58号の4は「指定地域密着型サービス基準第97条第6項及び第7項に規定する基準に適合していること」と定めています。中身は次のとおりです。
6 指定認知症対応型共同生活介護事業者は、前項の身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。
7 指定認知症対応型共同生活介護事業者は、身体的拘束等の適正化を図るため、次に掲げる措置を講じなければならない。
一 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができる)を三月に一回以上開催するとともに、その結果について、介護従業者その他の従業者に周知徹底を図ること。
二 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
三 介護従業者その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
| 要件 | 頻度・内容 |
|---|---|
| 記録 | 拘束を行った場合、態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由 |
| 委員会 | 3か月に1回以上。結果を全従業者に周知徹底 |
| 指針 | 身体的拘束等の適正化のための指針を整備 |
| 研修 | 定期的に実施 |
「緊急やむを得ない場合」の3要件
第97条第5項は、「利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」を除き、身体的拘束等を行ってはならないと定めています。実務では、この判断について切迫性・非代替性・一時性の3要件で検討することが定着しています。
- 切迫性:利用者本人又は他の利用者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がない
- 一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものである
(3要件は厚生労働省の身体拘束ゼロへの手引き等で示されてきた考え方で、上記の省令条文そのものではありません)
GHは家庭的な環境を旨とするサービスですが、次のような対応は身体的拘束等に当たり得ます。
- 玄関を施錠して出られないようにする
- 居室のドアを外から施錠する
- ベッド柵で降りられないように四方を囲む
- 立ち上がりを妨げる椅子やテーブルの使い方
- 向精神薬による過剰な鎮静
「安全のため」という理由だけでは、緊急やむを得ない場合の要件を満たしません。該当し得る対応があるなら、委員会で検討し記録を残すところから始めてください。(該当性の判断は筆者の実務経験にもとづく整理であり、最終的な判断は市町村の解釈によります)
3つの未実施減算の比較
| 減算 | 率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 身体拘束廃止未実施減算 | 本体10%/短期利用1% | 基準第97条第6項・第7項 |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% | 基準第108条で準用する第3条の38の2 |
| 業務継続計画未策定減算 | 3% | 基準第108条で準用する第3条の30の2第1項 |
身体拘束廃止未実施減算だけが桁違いに重いことがわかります。3つとも「体制が整っていないこと」に対する減算で、いずれもサービスの質そのものではなく手続きの不備で発生します。
介護予防(要支援2)でも同じ率
介護予防認知症対応型共同生活介護費(平成18年厚生労働省告示第128号)の注2にも同じ規定があり、本体10%・短期利用1%です。基準は告示95号第127号の4が定めています。
よくある質問
身体拘束をしていなければ減算されませんか?
されます。減算の基準は、委員会の3か月に1回以上の開催、指針の整備、定期的な研修という体制要件です。拘束の有無にかかわらず、これらを満たしていなければ減算対象です。
委員会はどのくらいの頻度で開きますか?
3か月に1回以上です。テレビ電話装置等を活用して開催することもできます。開催後は結果を全従業者に周知徹底する必要があります。
短期利用も10%減ですか?
短期利用(ロ)は1%です。本体(イ)の10%とは別に定められています。
研修の頻度は決まっていますか?
条文は「定期的に実施すること」としており、回数の明示はありません。運用の目安は市町村に確認してください。
拘束をした場合、何を記録しますか?
態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由の4点です(基準第97条第6項)。
玄関の施錠は身体拘束にあたりますか?
出入りを制限する目的での施錠は身体的拘束等に該当し得ます。該当性の判断や運用は市町村の解釈にもよるため、委員会で検討し確認してください。
減算はいつからいつまで続きますか?
基準を満たさない場合に減算されます。適用の開始・終了の具体的な取扱いは市町村に確認してください。
要支援2の入居者も同じ率ですか?
同じです。介護予防認知症対応型共同生活介護費でも本体10%・短期利用1%です。
- 身体拘束廃止未実施減算は本体10%、短期利用1%
- 10%は特養・老健と並ぶ最も重い水準
- 減算の基準は基準第97条第6項(記録)と第7項(委員会・指針・研修)
- 身体拘束をしていない事業所でも、体制が整っていなければ減算対象
- 委員会は3か月に1回以上。テレビ電話装置等の活用が可能
- 委員会の結果は全従業者に周知徹底する
- 拘束を行った場合は、態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録する
- 玄関の施錠やベッド柵の使い方も身体的拘束等に該当し得る
- 虐待防止措置未実施減算1%、業務継続計画未策定減算3%より重い
- 介護予防(要支援2)でも同じ率
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 認知症対応型共同生活介護費の注2・注3・注4(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第97条(指定認知症対応型共同生活介護の取扱方針)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の4、第58号の4の2、第58号の4の3、第127号の4(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)別表 介護予防認知症対応型共同生活介護費の注2(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の減算率・基準は、厚生労働省の告示・省令にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。グループホームは地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、運用が自治体によって異なる場合があります。身体的拘束等への該当性の判断、研修の頻度、減算の適用期間については所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の減算額の試算は単位数を単純に計算した概算であり、地域区分や端数処理により実際の請求額とは異なります。該当し得る対応の例など実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




