老健のターミナルケア加算とは?死亡日1,900単位と45日ルールを解説

老健のターミナルケア加算は、令和6年度改定で死亡日と、その前日・前々日への重点化が図られました。死亡日1,900単位(改定前1,650単位)、前日・前々日910単位(同820単位)。一方で死亡日以前31日以上45日以下は80単位から72単位に下がっています。
そして実務で最も注意すべきなのが「退所した日の翌日から死亡日までの間は算定しない」という規定。自宅や病院へ移った後の期間は算定できず、退所から45日以上経って亡くなった場合は、加算そのものが算定できません。
もうひとつ、請求実務の落とし穴があります。この加算は死亡月にまとめて算定するため、退所の翌月に亡くなった場合、入所していない月の自己負担を請求することになります。退所時に文書で同意を得ておく必要があります。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、老企第40号、令和6年度介護報酬改定における改定事項についてを突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 日数区分ごとの単位数と令和6年度改定での変化
- 施設サービス費の区分により単位数が2系統あること
- 死亡日を含めて45日が上限であること
- 退所後の期間は算定できないこと
- 死亡月にまとめて算定するため事前の同意が必要なこと
- 外泊期間の扱い
- 3つの算定要件
- 口頭同意の場合に必要な記録
- 家族の来所が見込めない場合でも算定できること
- 個室希望への配慮
単位数——死亡日に近いほど手厚い
告示は、算定する介護保健施設サービス費の区分によって2系統の単位数を定めています。
| 死亡日からの日数 | イ(1)(4)・ロ(1)(4)を算定する場合 | イ(2)(3)・ロ(2)(3)を算定する場合 |
|---|---|---|
| 死亡日以前31日以上45日以下 | 72単位 | 80単位 |
| 死亡日以前4日以上30日以下 | 160単位 | 160単位 |
| 死亡日の前日・前々日 | 910単位 | 850単位 |
| 死亡日 | 1,900単位 | 1,700単位 |
いずれも1日につき、死亡月にまとめて所定単位数に加算します。
令和6年度改定での変化
1.(4)⑦ 介護老人保健施設におけるターミナルケア加算の見直し
○ 介護老人保健施設における看取りへの対応を充実する観点や在宅復帰・在宅療養支援を行う施設における看取りへの対応を適切に評価する観点から、ターミナルケア加算について、死亡日以前31日以上45日以下の区分の評価を見直し、死亡日の前日及び前々日並びに死亡日の区分への重点化を図る。
| 区分 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 死亡日以前31日以上45日以下 | 80単位 | 72単位(減) |
| 死亡日の前日・前々日 | 820単位 | 910単位(増) |
| 死亡日 | 1,650単位 | 1,900単位(増) |
死亡日1,900+前日910+前々日910=3,720単位。1単位10円換算で約3万7,200円が最期の3日間に集中します。
改定前は1,650+820+820=3,290単位でしたから、430単位の増。一方で31日以上45日以下は1日あたり8単位減り、15日分で120単位のマイナスです。
差し引きでは、最期まで施設で看取った場合に手厚くなる設計に変わりました。
算定要件は3つ
○ 以下のいずれにも適合している入所者であること。
1 医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること。
2 入所者又はその家族等の同意を得て、入所者のターミナルケアに係る計画が作成されていること。
3 医師、看護師、介護職員、支援相談員、管理栄養士等が共同して、入所者の状態又は家族の求め等に応じ随時、本人又はその家族への説明を行い、同意を得てターミナルケアが行われていること。
計画の作成とターミナルケアの実施にあたっては、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行い、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に対する支援に努めることとされています。
45日が上限——ただし退所後は算定できない
ターミナルケア加算は、(中略)基準に適合するターミナルケアを受けた入所者が死亡した場合に、死亡日を含めて45日を上限として、介護老人保健施設において行ったターミナルケアを評価するものである。
死亡前に他の医療機関等に移った場合又は自宅等に戻った場合には、当該施設においてターミナルケアを直接行っていない退所した日の翌日から死亡日までの間は、算定することができない。(したがって、退所した日の翌日から死亡日までの期間が45日以上あった場合には、ターミナルケア加算を算定することはできない。)
ちびウルフ病院に移った後に亡くなった場合はどうなるんですか?
リハウルフ老健で実際にターミナルケアを行った期間だけが算定対象になる。退所した日の翌日から死亡日までは算定できない。
だから、たとえば退所して20日後に病院で亡くなったなら、45日のうち残り25日分——つまり老健にいた最後の25日分が算定対象になる。
ただし退所から45日以上経っていたら、加算そのものが算定できない。45日という枠を退所後の期間が食いつぶしてしまうからね。
老健は在宅復帰が目的の施設だから、状態が悪化したら病院へという流れも多い。いつ退所したかを正確に押さえておくことが、この加算では欠かせない。
請求実務の落とし穴——退所の翌月に亡くなった場合
介護老人保健施設を退所した月と死亡した月が異なる場合でも算定可能であるが、ターミナルケア加算は死亡月にまとめて算定することから、入所者側にとっては、当該施設に入所していない月についても自己負担を請求されることになるため、入所者が退所する際、退所の翌月に亡くなった場合に、前月分のターミナルケア加算に係る一部負担の請求を行う場合があることを説明し、文書にて同意を得ておくことが必要である。
入所していない月に請求書が届けば、家族は当然驚きます。通知は「文書にて同意を得ておくことが必要」と明記しています。
看取りが近い方が退所する場面は、家族にとって最もつらい時期です。そこで金銭の話をするのは気が重いですが、後からトラブルになるほうが双方にとって不幸です。退所時説明の定型文に組み込んでおくのが現実的です。
あわせて通知は、「施設退所の後も、継続して入所者の家族指導等を行うことが必要であり、入所者の家族等との継続的な関わりの中で、入所者の死亡を確認することが可能である」としています。退所後も家族とのつながりを保つことが前提になっています。
外泊期間の扱い
外泊又は退所の当日についてターミナルケア加算を算定できるかどうかは、当該日に所定単位数を算定するかどうかによる。したがって、入所者が外泊した場合(外泊加算を算定した場合を除く。)には、当該外泊期間が死亡日以前45日の範囲内であれば、当該外泊期間を除いた期間について、ターミナルケア加算の算定が可能である。
- 算定の可否はその日に所定単位数を算定するかどうかで決まる
- 外泊した期間は除いた期間について算定する
- ただし45日の枠自体は動かない
同意と記録——口頭でもよいが記録は必須
本人又はその家族に対する随時の説明に係る同意については、口頭で同意を得た場合は、その説明日時、内容等を記録するとともに、同意を得た旨を記載しておくことが必要である。
家族の来所が見込めない場合
本人が十分に判断をできる状態になく、かつ、家族の来所が見込めないような場合も、医師、看護職員、介護職員、支援相談員、管理栄養士等が入所者の状態等に応じて随時、入所者に対するターミナルケアについて相談し、共同してターミナルケアを行っていると認められる場合には、ターミナルケア加算の算定は可能である。
この場合には、適切なターミナルケアが行われていることが担保されるよう、職員間の相談日時、内容等を記録するとともに、本人の状態や、家族と連絡を取ったにもかかわらず来所がなかった旨を記載しておくことが必要である。
なお、家族が入所者の看取りについてともに考えることは極めて重要であり、施設としては、1度連絡を取ったにもかかわらず来所がなかったとしても、定期的に連絡を取り続け、可能な限り家族の意思を確認しながらターミナルケアを進めていくことが重要である。
家族の同意が得られないと算定できない、と考えられがちですが違います。本人が判断できず、家族の来所も見込めない場合でも、多職種が相談して共同でターミナルケアを行っていれば算定できます。
ただし記録の要求は重くなります。職員間の相談日時と内容、本人の状態、家族に連絡したが来所がなかった旨——この3点が必要です。
そして通知は「1度連絡を取ったにもかかわらず来所がなかったとしても、定期的に連絡を取り続け」と求めています。1回で諦めないことが要件に織り込まれています。
個室でのターミナルケアへの配慮
ターミナルケア加算を算定するに当たっては、本人又はその家族が個室でのターミナルケアを希望する場合には、当該施設は、その意向に沿えるよう考慮すべきであること。なお、個室に移行した場合の入所者については、注15に規定する措置の対象とする。
従来型個室へ移った場合の室料の取扱いについて、告示注15の措置の対象になります。「個室を希望したら費用が上がる」という事態を避けるための配慮です。
特養の看取り介護加算との違い
| 項目 | 老健 | 特養 |
|---|---|---|
| 加算名 | ターミナルケア加算 | 看取り介護加算 |
| 上限 | 死亡日を含めて45日 | 死亡日からの日数区分による |
| 退所後の期間 | 直接ケアを行っていない期間は算定できない | |
老健は在宅復帰を目的とする施設であり、看取りは本来の役割ではありません。それでも実際には施設内で最期を迎える方がおり、その対応を評価するのがこの加算です。名称が「看取り介護」ではなく「ターミナルケア」となっているのも、医療機能を持つ施設としての位置づけを反映しています。
算定にあたっての実務ステップ
- 医師が回復の見込みがないと診断する
- 本人または家族等の同意を得て、ターミナルケアに係る計画を作成する
- 計画の作成にあたり「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等を参考にする
- 医師・看護師・介護職員・支援相談員・管理栄養士等が共同して、随時本人・家族に説明し同意を得る
- 口頭同意の場合は説明日時・内容・同意を得た旨を記録する
- 家族の来所が見込めない場合は、職員間の相談日時・内容と、連絡したが来所がなかった旨を記録する
- 1度連絡が取れなくても、定期的に連絡を取り続ける
- 個室希望があれば意向に沿えるよう考慮する
- 退所する場合は、退所の翌月に亡くなったときの一部負担の請求について説明し、文書で同意を得る
- 退所後も家族と継続的に関わり、死亡を確認できるようにする
- 死亡日から45日をさかのぼり、退所日の翌日以降と外泊期間を除いた日数で算定する
- 死亡月にまとめて算定する
9つ目を忘れないでください。文書での同意がなければ、後から一部負担を請求することになります。
よくある質問
死亡日の単位数はいくらですか?
介護保健施設サービス費の区分により1,900単位または1,700単位です。前日・前々日は910単位または850単位です。
令和6年度改定で何が変わりましたか?
死亡日以前31日以上45日以下が80単位から72単位に下がり、死亡日の前日・前々日が820単位から910単位、死亡日が1,650単位から1,900単位に引き上げられました。
何日分まで算定できますか?
死亡日を含めて45日が上限です。
退所後に亡くなった場合は算定できますか?
退所した日の翌日から死亡日までの間は算定できません。退所から死亡までの期間が45日以上あった場合は、加算そのものを算定できません。
退所した月と死亡した月が違う場合は?
算定可能ですが、死亡月にまとめて算定するため、入所していない月について自己負担を請求することになります。退所時に説明し、文書で同意を得る必要があります。
外泊した期間は算定できますか?
外泊加算を算定した場合を除き、外泊期間を除いた期間について算定します。算定の可否はその日に所定単位数を算定するかどうかによります。
算定要件は何ですか?
①医師が回復の見込みがないと診断していること、②本人・家族等の同意を得てターミナルケアに係る計画が作成されていること、③多職種が共同して随時説明し同意を得てターミナルケアが行われていることの3つです。
同意は書面でないといけませんか?
随時の説明に係る同意は口頭でも構いませんが、説明日時・内容等を記録し、同意を得た旨を記載する必要があります。
家族が来所しない場合は算定できませんか?
算定できます。本人が判断できず家族の来所も見込めない場合でも、多職種が随時相談し共同してターミナルケアを行っていると認められれば算定可能です。ただし相談日時・内容や、連絡したが来所がなかった旨の記録が必要です。
家族に一度連絡すればよいですか?
通知は「1度連絡を取ったにもかかわらず来所がなかったとしても、定期的に連絡を取り続け、可能な限り家族の意思を確認しながらターミナルケアを進めていくことが重要」としています。
個室を希望された場合は?
その意向に沿えるよう考慮すべきとされています。個室に移行した場合の入所者は告示注15に規定する措置の対象となります。
特養の看取り介護加算と同じですか?
別の加算です。老健はターミナルケア加算、特養は看取り介護加算で、単位数も日数区分も異なります。
- 老健のターミナルケア加算は死亡日に近いほど手厚い
- 死亡日1,900単位または1,700単位、前日・前々日910単位または850単位
- 介護保健施設サービス費の区分により単位数が2系統ある
- 令和6年度改定で死亡日と前日・前々日が引き上げられた
- 死亡日以前31日以上45日以下は80単位から72単位に下がった
- 最期の3日間で3,720単位が集中する
- 算定要件は医師の診断・計画の作成と同意・多職種共同の説明と同意の3つ
- 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインを参考にする
- 死亡日を含めて45日が上限
- 退所した日の翌日から死亡日までは算定できない
- 退所から死亡まで45日以上あれば加算自体を算定できない
- 死亡月にまとめて算定する
- 退所の翌月に亡くなった場合の一部負担について文書で同意を得る
- 退所後も家族と継続的に関わり死亡を確認する
- 外泊期間は除いた期間について算定する
- 口頭同意の場合は説明日時・内容・同意を得た旨を記録する
- 家族の来所が見込めなくても多職種の共同があれば算定できる
- その場合は職員間の相談記録と連絡経過の記載が必要
- 1度連絡が取れなくても定期的に連絡を取り続ける
- 個室希望には意向に沿えるよう考慮する
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号) 介護保健施設サービス イ及びロの注18(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第40号) 介護保健施設サービス(20)ターミナルケア加算について
- 令和6年度介護報酬改定における改定事項について(PDF) 1.(4)⑦ 介護老人保健施設におけるターミナルケア加算の見直し(厚生労働省)
- 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、老企第40号の留意事項通知および令和6年度介護報酬改定の資料にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。単位数は算定する介護保健施設サービス費の区分によって2系統に分かれます。自施設がどの区分に該当するかは告示原文および指定権者にご確認ください。退所日の判定、外泊期間の取扱い、家族の来所が見込めない場合の記録の範囲についても、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。ターミナルケアの内容や本人・家族への関わり方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、医学的な判断や治療方針を示すものではありません。



