「理学療法士(PT)や作業療法士(OT)って、これから先も食べていけるの?」——養成校が増え、有資格者が年々増加していると聞くと、将来性に不安を感じるのは当然のことです。SNSでは「供給過剰」「オワコン」といった言葉も飛び交い、これから目指す人も、いま現場で働く人も、モヤモヤを抱えているのではないでしょうか。

結論から言うと、PT・OTは「資格を持っているだけで安泰」の時代は終わりつつある一方で、需要そのものが消えるわけではありません。大切なのは、国の需給推計という「事実」を正しく知り、その上で自分がどう動くかを設計することです。この記事では、厚生労働省のデータをもとに将来性の実像を整理し、これからの時代を生き抜くための具体的な戦略まで、現役セラピストの視点でお伝えします。

この記事でわかること
  • 厚生労働省の需給推計から見た、PT・OTの供給過剰の実態
  • 「将来性がない」と言われる本当の理由と、その誤解
  • これからも需要が伸びる分野・活躍の場
  • 供給過剰時代を生き抜くための3つのキャリア戦略
  • これから目指す人・いま働く人が今日からできること

理学療法士・作業療法士の将来性は「なくなる」のか

まず、いちばん気になる「将来性はあるのか、ないのか」に結論からお答えします。将来性がゼロになることはありませんが、これまでのように「有資格者なら誰でも就職に困らない」状況ではなくなります。理由は、需要(リハビリを必要とする人の数)よりも供給(有資格者の数)が速いペースで増えているからです。

ちびウルフちびウルフ

「供給過剰」ってよく聞くけど、本当に仕事がなくなっちゃうの?

リハウルフリハウルフ

ゼロにはならないよ。ただ「求人を選ばなければ入れる」時代から「選ばれる人が良い条件で働ける」時代に変わっていく、と考えると分かりやすいね。

有資格者はこの10年で約2倍に増えた

理学療法士の有資格者数は、2011年に約9万人だったものが、2021年時点で約19万人へとほぼ倍増しました。作業療法士も、2023年3月時点で約11万4千人にのぼります。毎年、PTだけで1万人以上が新たに国家試験に合格しており、この増加ペースは当面続く見込みです。

背景にあるのは、2000年代に養成校(大学・専門学校)が急増したことです。国の方針で門戸が大きく開かれた結果、資格そのものは取りやすくなった一方で、卒業生が労働市場にあふれる構造ができあがりました。

厚生労働省は「2040年に供給が需要の約1.5倍」と推計

もっとも重要な事実がこれです。厚生労働省の「理学療法士・作業療法士需給分科会」(2019年)は、2040年ごろにはPT・OTの供給数が需要数の約1.5倍に達すると推計しました。具体的には、2040年の供給見込みは理学療法士が約30万8千人、作業療法士が約15万7千人とされています。

項目理学療法士(PT)作業療法士(OT)
有資格者数(近年)約19万人(2021年)約11万4千人(2023年)
2040年の供給見込み約30万8千人約15万7千人
需給の関係(2040年ごろ)供給が需要の約1.5倍に(厚労省推計)
ポイント「1.5倍」という数字は、資格を持つ人のうち一定数が希望どおりの職に就きにくくなる可能性を示しています。ただしこれは全国平均の推計であり、地域や分野によって状況は大きく異なります。悲観しすぎず、事実として押さえておきましょう。

「将来性がない」と言われる3つの理由

ネット上で「PT・OTは将来性がない」と語られる背景には、主に次の3つの理由があります。ひとつずつ、事実と誤解を切り分けて見ていきましょう。

理由1:供給過剰で就職・転職の競争が激しくなる

前述のとおり、有資格者の増加スピードが需要を上回っています。そのため、人気のある職場(大手病院、好立地、高待遇)には応募が集中し、選考のハードルが上がっています。数年前なら「資格があればどこかには入れた」ものが、今は「職場を選ぶと入れないこともある」という状況に近づいています。

理由2:診療報酬・介護報酬の抑制で給料が上がりにくい

PT・OTの収入の多くは、公的保険(診療報酬・介護報酬)を財源としています。国の社会保障費は年々厳しくなっており、リハビリに関わる報酬も抑制傾向にあります。その結果、昇給幅が小さく、年収が頭打ちになりやすいという不満につながっています。これは「将来性がない」と語られる大きな要因です。

理由3:AI・ロボット・自費リハなど環境変化への不安

リハビリ支援ロボットやAIによる評価ツールの登場で、「仕事が奪われるのでは」という声もあります。ただし現時点では、人の身体に手で触れ、生活背景を汲み取って個別に関わる仕事の中核は、簡単に機械へ置き換わりません。むしろ、こうしたツールを使いこなせる人材の価値が高まる方向にあります。

ちびウルフちびウルフ

じゃあ「将来性がない」って言葉、半分は誤解ってこと?

リハウルフリハウルフ

そうだね。「何もしなくても安泰」ではなくなった、というのが正確。裏を返せば、動いた人にはチャンスが残っているということなんだ。

それでも需要が伸びる分野・活躍の場

供給過剰といっても、すべての分野が飽和しているわけではありません。むしろこれから需要が伸びる領域は明確に存在します。将来性を考えるうえで、どこに人手が必要とされるかを知っておくことは非常に重要です。

在宅・訪問リハビリ(地域包括ケア)

高齢化と「病院から地域・在宅へ」という国の方針により、訪問リハビリや通所リハビリの需要は今後も拡大が見込まれます。介護分野で働くPTは2018年時点で約2万5千人強、2025年には3万人を超える見込みとされ、病院以外での活躍の場が広がっています。生活に密着した支援ができる在宅領域は、供給過剰時代でも人手が求められやすい分野です。

予防・健康増進・産業分野

介護予防、フレイル対策、企業での従業員の健康管理(産業理学療法)など、「病気になる前」に関わる領域も伸びています。保険に頼らない自費リハビリやパーソナルトレーニング、スポーツ分野なども、専門性を武器にすれば収入面での可能性が広がります。

作業療法士ならではの伸びしろ(精神・発達・就労支援)

作業療法士は、身体だけでなく精神科領域、発達支援(児童)、認知症ケア、就労支援など幅広い分野に関われるのが強みです。特に精神・発達領域や地域生活支援は社会的ニーズが高まっており、OTの専門性が活きる場面が増えています。「OTは仕事の幅が広い」という特性は、供給過剰時代のリスク分散にもなります。

伸びる分野主な担い手ポイント
訪問・通所リハPT・OT・ST在宅シフトで需要拡大。生活支援スキルが武器
予防・健康・産業主にPT自費・企業案件で収入の上限を広げやすい
精神・発達・就労支援主にOT社会的ニーズ増。OTの専門性が活きる
回復期・急性期の専門特化PT・OT高い臨床力があれば選ばれ続ける

供給過剰時代を生き抜く3つのキャリア戦略

ここからが本題です。将来性を「与えられるもの」ではなく「自分でつくるもの」と捉えると、やるべきことが見えてきます。現役セラピストの視点で、特に効果的な3つの戦略を紹介します。

  1. 専門性を尖らせる(代わりのきかない人になる)
    脳卒中・整形・呼吸・心臓・小児・認知症など、特定領域を深掘りして「この分野ならこの人」と言われる状態を目指します。認定・専門資格の取得や学会活動も、選ばれ続けるための投資です。
  2. 働く場を戦略的に選ぶ(伸びる市場に身を置く)
    飽和した市場で消耗するより、需要が伸びる在宅・予防・自費・産業などへ軸足を移すことで、同じ努力でも成果が出やすくなります。転職はそのための有効な手段です。
  3. スキルを掛け合わせる(ダブルライセンス・副業)
    PT・OTの専門性に、ケアマネジャー資格、マネジメント、発信力(ブログ・SNS)、他資格などを掛け合わせると、代替されにくい独自のポジションが築けます。
注意「とりあえず資格を取っただけ」で立ち止まると、供給過剰の波に押し流されやすくなります。逆に、上記のどれか一つでも動き始めれば、将来の選択肢は大きく変わります。焦って全部やる必要はありません。まずは一歩から始めましょう。

専門性×市場×掛け算——組み合わせが最強

この3つは、どれか一つでも効果がありますが、組み合わせると相乗効果が生まれます。たとえば「呼吸リハの専門性(専門性)×在宅・訪問(伸びる市場)×ケアマネ資格(掛け算)」といった形です。自分の興味と強みに合わせて、無理のない組み合わせを設計していきましょう。

ちびウルフちびウルフ

今は病院で漠然と働いてるけど、何から始めればいいのかな?

リハウルフリハウルフ

まずは「自分がどの分野を深めたいか」を考えることから。方向が決まれば、勉強も転職も副業も、すべてがそこに向かって進み始めるよ。

これから目指す人・いま働く人へのアドバイス

これからPT・OTを目指す人へ

「供給過剰」という言葉に過度におびえる必要はありません。ただし、「資格を取れば安泰」という前提で進路を選ぶのは危険です。在学中から興味のある専門分野を見つけ、実習先や就職先を戦略的に選ぶ意識を持てば、卒業時のスタートラインが変わります。人と関わることが好きで、学び続けられる人にとっては、今も十分にやりがいのある職業です。

いま現場で働くPT・OTへ

すでに働いている人にとって、いちばんのリスクは「今の職場に不満を抱えたまま、何も動かずに年数だけが過ぎること」です。年齢が上がるほど転職の選択肢は狭まります。動くなら早いほうが有利です。今の職場で専門性を磨くのか、伸びる市場へ移るのか、掛け算を増やすのか——まずは情報収集から始めてみてください。

PT・OTそれぞれの将来性の違い

「理学療法士と作業療法士、将来性が高いのはどっち?」という疑問はよく聞かれます。結論としてはどちらが上ということはなく、伸びる方向性が違うと理解するのが正解です。それぞれの強みを知っておくと、進路選択やキャリア設計の軸が定まります。

理学療法士(PT)の強みと将来性

PTは「動作・歩行・運動機能」の専門家です。整形外科疾患や脳卒中後のリハビリはもちろん、スポーツ、予防・健康増進、産業(企業の健康管理)など、保険外の領域にも展開しやすいのが強みです。身体機能へのアプローチは幅広い場面で必要とされ、自費リハやパーソナル指導など、収入の上限を自分で広げられる余地があります。一方で有資格者数が最も多く、平凡なまま留まると競争に埋もれやすい点には注意が必要です。

作業療法士(OT)の強みと将来性

OTは「生活行為・作業」を通じて、身体だけでなく精神・発達・認知まで幅広く関われるのが最大の特徴です。精神科リハビリ、発達支援(児童)、認知症ケア、就労支援など、社会的ニーズが高まっている領域に強みを持ちます。関われる分野が多いということは、一つの市場が飽和しても別の領域に軸足を移せる「リスク分散」ができるということでもあります。専門性を尖らせれば、代替されにくいポジションを築きやすい職種です。

視点理学療法士(PT)作業療法士(OT)
主な専門領域動作・歩行・運動機能生活行為・精神・発達・認知
伸びやすい分野予防・スポーツ・産業・自費精神・発達・就労支援・認知症
将来性のポイント身体機能ニーズは根強い。差別化がカギ領域が広くリスク分散しやすい

現役セラピストが伝えたい、将来性を高める習慣

将来性は、大きな決断だけで決まるものではありません。日々の小さな習慣の積み重ねが、5年後・10年後の市場価値をつくります。特別な才能がなくても、次のような習慣を続けるだけで、周囲と差がついていきます。

学び続ける姿勢を止めない

資格を取ってからが本当のスタートです。臨床の疑問をそのままにせず、文献や研修で学び直す。担当する疾患を深掘りする。こうした地道な積み重ねが、「この人に任せたい」と言われる信頼につながります。逆に、現状維持で学びを止めた瞬間から、供給過剰の波に飲まれやすくなります

臨床以外のスキルにも目を向ける

これからのセラピストには、臨床力に加えて「伝える力」「まとめる力」「マネジメント」といった汎用スキルも武器になります。後輩指導、勉強会での発表、SNSやブログでの発信などは、自分の市場価値を高める練習の場です。臨床×αの掛け算が、代替されにくい人材への近道です。

ポイント「将来が不安だから何かしなきゃ」と焦る必要はありません。まずは目の前の患者・利用者に丁寧に向き合い、一つの分野を深めること。その積み重ねが、結果として最も強いキャリアの土台になります。
ちびウルフちびウルフ

結局、いちばん大事なことって何なの?

リハウルフリハウルフ

「事実を知って、動き続けること」だよ。供給過剰は事実。でも、それを知ったうえで一歩ずつ動く人には、ちゃんと道が残っているんだ。

よくある質問(PT・OTの将来性)

理学療法士と作業療法士、将来性が高いのはどちら?
どちらも将来性がなくなることはありません。PTは在宅・予防・スポーツなど身体機能領域で、OTは精神・発達・就労支援など幅広い領域で強みがあります。「どちらが上」ではなく、自分が関わりたい分野で専門性を高められるかが重要です。
供給過剰でも、地方なら就職しやすいですか?
地域差は確かにあります。都市部は有資格者が集中しやすく競争が激しい一方、地方や在宅分野では人手が足りない事業所も少なくありません。「どこで働くか」を戦略的に選ぶことは、将来性を高める有効な手段のひとつです。
AIやロボットにPT・OTの仕事は奪われますか?
評価の一部や記録業務は効率化される可能性がありますが、身体に触れ、生活背景を汲み取って個別に関わる中核の仕事は簡単には置き換わりません。むしろ新しいツールを使いこなせる人の価値が上がると考えられます。
年収を上げるには、やはり転職しかないですか?
転職は有効な手段ですが、唯一の方法ではありません。専門・認定資格の取得、役職への昇格、在宅・自費分野への挑戦、副業(発信・講師など)も選択肢です。複数を組み合わせることで、収入の伸びしろは大きく広がります。
「オワコン」「やめとけ」という声は信じるべき?
半分は事実(何もしなければ厳しくなる)、半分は誤解(動けばチャンスは残る)です。ネガティブな言葉を鵜呑みにせず、需給推計という事実を踏まえたうえで、自分の戦略を立てることが大切です。
まとめ
  • PT・OTの将来性はゼロにならないが、「資格だけで安泰」の時代は終わりつつある
  • 厚労省推計では、2040年ごろに供給が需要の約1.5倍に達する見込み
  • 「将来性がない」の背景は、供給過剰・報酬抑制・環境変化の3つ
  • 在宅・予防・産業、精神・発達・就労支援など、伸びる分野は確実にある
  • 生き抜く鍵は「専門性を尖らせる×伸びる市場を選ぶ×スキルを掛け合わせる」
  • 動くなら早いほうが有利。まずは情報収集と方向づけから始めよう
ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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