近年、訪問リハビリテーション事業所の立ち上げが全国的に増えています。「なぜ今、訪問リハの新設が増えているのか?」——この背景には、診療報酬・介護報酬の制度設計や、リハ職の増加といった複数の要因が絡み合っています。

この記事では、訪問リハビリ事業所の立ち上げが増える理由を4つの視点から整理し、令和6年度(2024年度)の最新動向まで踏まえて解説します。これから訪問リハの開設を検討している管理者・経営者の方はもちろん、業界の流れを知っておきたいPT・OT・STにも役立つ内容です。

この記事でわかること
  • 訪問リハビリ事業所が年々増加している実態
  • 立ち上げが増える4つの理由(制度・施設・人材の観点)
  • 訪問看護ステーションのリハ職問題との関係
  • 令和6年度改定を踏まえた今後の見通し
ちびウルフちびウルフ

最近、訪問リハの事業所がどんどん増えてるって本当?

リハウルフリハウルフ

本当だよ。しかもただ増えてるんじゃなくて、制度の仕組みがちゃんと後押ししてるんだ。理由を一つずつ見ていこう。

訪問リハビリテーション事業所は年々増加している

厚生労働省のデータからも、訪問リハビリテーション事業所が年々増加していることが分かります。事業所数の増加に比例して、サービスを利用する受給者も増え続けています。在宅医療・在宅リハのニーズが高まり続けていることの表れです。

開設者の種別をみると、病院・診療所が大半を占め、介護老人保健施設(老健)がこれに続く構成になっています。おおまかな割合は次のとおりです。

開設者種別割合の目安特徴
病院・診療所約8割みなし指定で立ち上げやすい
介護老人保健施設(老健)約2割在宅復帰支援の評価と関連
介護医療院ごく少数近年制度化された施設類型
ポイント訪問リハビリは、病院・診療所・老健が「みなし指定」で開設しやすいのが大きな特徴です。新たに専用の施設を作らなくても、既存の医療・介護機能を活かして始められるため、立ち上げのハードルが低いのです。具体的な数値は公表年度により変動するため、最新の統計でご確認ください。

訪問リハビリ事業所の立ち上げが増える4つの理由

訪問リハビリの立ち上げが増える背景には、大きく次の4つの理由があります。

No理由キーワード
1地域包括ケア病棟の施設基準在宅サービスの実績要件
2老健の在宅復帰・在宅療養支援評価居宅サービス実施数
3訪問看護ステーションのリハ職問題リスク分散
4理学療法士等の増加活躍フィールドの拡大

一つひとつ説明していきます。

①地域包括ケア病棟の影響で訪問リハの立ち上げが増加

1つ目の理由は、地域包括ケア病棟(病床)の施設基準の影響です。地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料には、上位区分を算定するための「在宅復帰・在宅医療等の実績」要件が設けられています。

その実績要件の一つに、同一・隣接する敷地内の事業所が、訪問介護・訪問看護・訪問リハビリ・介護予防訪問看護・介護予防訪問リハビリのいずれかの提供実績を有していることという項目があります。

訪問リハビリは前述のとおり立ち上げが比較的容易なため、この実績要件を満たす目的で、病院が小規模な訪問リハ事業所を併設する流れが一部で生まれています。

注意地域包括ケア病棟の施設基準は診療報酬改定のたびに見直されます。実績要件の詳細や区分は最新の告示・通知で必ず確認してください。基準を満たすためだけの形骸化した運営は、本来の在宅支援の趣旨に反する点にも留意が必要です。

②老健の在宅復帰支援評価で訪問リハの立ち上げが加速

2つ目の理由は、介護老人保健施設(老健)の在宅復帰・在宅療養支援等評価指標です。

令和3年度介護報酬改定で、この評価指標のうち「居宅サービスの実施数」の項目が見直され、2サービスを実施する場合に訪問リハビリを含めることができるよう整理されました。老健は上位区分(超強化型・在宅強化型など)を目指すうえで、居宅サービスの実施が評価につながります。

老健は施設内にリハ職を多く抱えているため、訪問リハビリの立ち上げが容易です。在宅復帰支援の評価を高める手段として、訪問リハを併設する老健が増えています。なお、令和6年度改定でも在宅復帰・在宅療養支援機能の評価は重視されており、この流れは継続しています。

ちびウルフちびウルフ

老健はもともとリハの人がたくさんいるから始めやすいんだね!

リハウルフリハウルフ

そうなんだ。人員も設備も整っているから、制度の後押しがあれば自然と立ち上げが進むんだよ。

③訪問看護ステーションのリハ職問題による分散の動き

3つ目の理由は、近年たびたび議論される「訪問看護ステーションにリハ職が増加している問題」です。

訪問看護ステーションからの理学療法士等による訪問看護のあり方は、報酬改定の議論で繰り返し論点になってきました。効果的な訪問看護を促す観点から、リハ職中心の運営に対しては見直しが重ねられています。

そして令和6年度(2024年度)介護報酬改定では、ついに理学療法士等による訪問看護への新たな減算が導入されました。主な内容は次のとおりです。

令和6年度改定:リハ職の訪問看護に関する主な見直し
  • リハ職による訪問看護の基本報酬を294単位/回(介護予防は284単位/回)に見直し
  • 前年度にリハ職の訪問回数が看護職員を上回る等の場合、1回につき8単位減算
  • 緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない場合も減算対象
  • 介護予防訪問看護で利用開始から12月超のリハ職訪問は、さらに15単位減算

このように訪問看護からのリハ提供は制度的に厳しくなる方向です。そのため、「訪問看護一本では先行きが不安」と考える法人が、リスク分散として訪問リハビリを立ち上げる動きが強まっています。訪問リハは医師の指示のもと提供され、リハ職本来の業務として位置づけが明確だからです。

④理学療法士等の増加で立ち上げが加速

4つ目の理由は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士そのものの増加です。

かつてリハ職の活躍の場は病院が中心でしたが、養成校の増加に伴い有資格者が急増し、通所リハ・通所介護・訪問系サービスなど在宅分野で働くリハ職も大きく増えました。

その結果、法人としては増えたリハ職が活躍できるフィールドを確保するために、事業を拡大して訪問リハビリを立ち上げるケースが増えています。人材の受け皿づくりという観点からも、訪問リハの新設は理にかなった選択なのです。

訪問リハビリの立ち上げは今後ますます増える

ここまで見てきたように、訪問リハビリ事業所の増加は制度・施設・人材という複数の要因が重なった必然です。地域包括ケア病棟や老健の評価指標、訪問看護のリハ職問題、そしてリハ職の増加——いずれも一過性のものではありません。

高齢化が進み在宅医療・在宅リハのニーズが高まり続けるなか、訪問リハビリの立ち上げは今後もさらに増えていくと考えられます。これから開設を検討する場合は、人員基準・指示書の運用・加算の要件を正しく押さえ、制度に沿った運営をすることが成功のカギになります。

訪問リハビリを立ち上げる際の基本ステップと注意点

では、実際に訪問リハビリを立ち上げる際には、どのような手順を踏むのでしょうか。みなし指定で開設しやすいとはいえ、押さえるべき要件はしっかりあります。大まかな流れは次のとおりです。

  1. 医療機関(病院・診療所)または老健として、訪問リハビリの提供体制と人員(PT・OT・ST、医師)を整える
  2. 運営規程・利用契約書・各種記録様式など、必要書類を準備する
  3. 都道府県等に指定申請を行い、指定を受ける(病院・診療所・老健はみなし指定の扱いに留意)
  4. 主治医(事業所の医師)の指示・リハビリテーション計画に基づいて、サービス提供を開始する

訪問リハビリは、医師の診察と指示が前提となるサービスです。利用者ごとに医師の指示とリハビリテーション計画を整え、定期的に評価・見直しを行う運用が欠かせません。訪問看護からのリハとは指示・算定の仕組みが異なるため、両者の違いを正しく理解しておくことが、コンプライアンス上も重要です。

ポイント立ち上げのしやすさだけで判断せず、継続的に質の高いリハを提供できる体制を整えることが、結局は安定した事業運営につながります。事業所評価加算や退院時共同指導加算など、リハの質や連携を評価する加算の要件もあわせて確認しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

訪問リハビリ事業所の立ち上げはなぜ増えているのですか?
①地域包括ケア病棟の在宅実績要件、②老健の在宅復帰支援評価、③訪問看護のリハ職問題によるリスク分散、④リハ職の増加、という4つの要因が重なっているためです。いずれも制度設計と人材動向に根ざした構造的な背景です。
訪問リハビリは立ち上げやすいのですか?
病院・診療所・老健は「みなし指定」で開設できるため、専用施設を新設しなくても既存機能を活かして始められます。人員や設備が整っている医療機関・老健にとっては、比較的ハードルの低い事業といえます。ただし人員基準や指示書運用など要件の遵守は必須です。
訪問看護のリハと訪問リハビリはどう違いますか?
訪問看護ステーションからのリハは「訪問看護費」として看護の一環で提供され、令和6年度改定で減算が設けられました。一方、訪問リハビリは医師の指示のもと「訪問リハビリテーション費」として提供され、リハ職本来の業務として位置づけが明確です。この違いが立ち上げ増加の一因にもなっています。
これから訪問リハビリを立ち上げる際の注意点は?
人員基準、医師の指示書の運用、各種加算の算定要件を正しく理解することが重要です。報酬改定で要件が変わるため、最新の告示・通知を確認し、制度に沿った運営を徹底しましょう。基準を満たすためだけの形骸的な運営は避けるべきです。
まとめ
  • 訪問リハビリ事業所は年々増加し、受給者も比例して増えている
  • 立ち上げが増える理由は、①地域包括ケア病棟の実績要件、②老健の在宅復帰支援評価、③訪問看護のリハ職問題、④リハ職の増加の4つ
  • 令和6年度改定で訪問看護のリハ職に減算が入り、訪問リハへの分散がさらに進んでいる
  • 在宅ニーズの高まりを背景に、訪問リハの立ち上げは今後も増える見込み

出典:厚生労働省「令和3年度/令和6年度介護報酬改定」関連資料、中央社会保険医療協議会(中医協)資料、診療報酬改定資料。制度・報酬の要件は改定や解釈通知により変わるため、最新の告示・通知をご確認ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶