訪問リハビリに将来性はある?統計と制度から現役PTが検証

「訪問リハビリに将来性はあるのか」——病院や老健からのキャリアチェンジを考えるとき、誰もが一度は立ち止まるテーマです。結論から言うと、在宅リハビリの需要は伸び続けており、仕事がなくなることは当面考えられません。ただし「訪問リハビリなら安泰」ではありません。統計を見ると、伸びているのは訪問リハビリ事業所ではなく、訪問看護ステーション経由の在宅リハビリだからです。
この記事では、訪問リハビリ歴10年以上の現役理学療法士(介護支援専門員)の立場から、厚生労働省の統計と告示・通知にもとづいて訪問リハビリの将来性を検証します。「高齢者が増えるから安泰」という話ではなく、数字と制度の方向性から、どこで働くセラピストが伸び、どこが厳しくなるのかを具体的に示します。
- 訪問リハビリと訪問看護、受給者数の伸び方の決定的な差(一次統計)
- 訪問看護ステーションで働くPT・OT・STの実数(4.4万人)
- 通所リハビリが減少に転じているという事実
- 令和6年度に導入された「訪問回数超過等減算」の2つの経路
- 令和8年6月に処遇改善加算が新設された意味
- 令和9年度改定で予告されている「提供形態に応じた評価」の中身
- 2040年に向けて需要が構造的に伸びる理由
- 淘汰の時代に選ばれるセラピストの条件
ちびウルフ高齢者が増えるんだから、訪問リハビリは安泰なんじゃないの?
リハウルフ市場全体はそうです。ただ「訪問リハビリ」という制度上のサービスと、「在宅でリハビリをする仕事」はイコールではありません。数字を見ると、伸びている入口はひとつに偏っています。ここを知らないまま職場を選ぶと、10年後に効いてきます。
データで見る訪問リハビリの現在地
まず、印象論ではなく統計で現状を押さえます。厚生労働省「令和6年度 介護給付費等実態統計」(令和6年5月審査分〜令和7年4月審査分)の年間累計受給者数は次のとおりです。
| サービス | 年間累計受給者数 | 対前年増減率 |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 833.0万人 | +6.6% |
| 訪問リハビリテーション | 146.3万人 | +2.3% |
| 介護予防訪問看護 | 149.8万人 | +10.8% |
| 介護予防訪問リハビリテーション | 35.5万人 | +7.1% |
| 通所リハビリテーション | 499.4万人 | △0.4% |
訪問リハビリは伸びているが、伸び幅は訪問看護の3分の1
訪問リハビリテーションの受給者数は確かに増えています。ただし+2.3%に対し、訪問看護は+6.6%。介護予防で比べると、訪問リハ+7.1%に対し訪問看護+10.8%です。在宅ケア全体のパイは広がっているのに、訪問リハビリテーションという制度枠の伸びはそれに追いついていません。
さらに規模を見てください。訪問看護833万人に対し、訪問リハビリは146.3万人。約5.7倍の差があります。在宅の現場でリハビリを提供している主戦場は、すでに訪問看護のほうに移っているのです。
訪問看護ステーションのリハ職は4万4千人
供給側も見ます。厚生労働省「令和6年介護サービス施設・事業所調査」(令和6年10月1日現在)によると、訪問看護ステーションは18,042事業所で、前年から1,619事業所(+9.9%)増加しています。他の居宅サービスが軒並み横ばい・減少のなかで、突出した伸びです。
| 訪問看護ステーションの従事者(実人員) | 人数 |
|---|---|
| 看護師 | 128,935人 |
| 准看護師 | 9,877人 |
| 理学療法士 | 28,666人 |
| 作業療法士 | 12,308人 |
| 言語聴覚士 | 3,527人 |
| 従事者総数 | 200,229人 |
PT・OT・STを合わせると44,501人。従事者総数200,229人の約22%、およそ5人に1人がリハビリ職です。「訪問リハビリの求人」として世に出ているものの多くは、制度上は訪問看護ステーションのセラピスト職です。この2つを区別せずに将来性を考えても、答えは出ません。
通所リハビリは減少に転じている
見落とされがちですが、通所リハビリテーションの受給者数は前年比△0.4%で減少しています。事業所数も8,030事業所で△1.2%。高齢者は増えているのに、通所リハは縮んでいるのです。
訪問リハビリの将来性を左右する3つの制度動向
需要が伸びていても、制度が報酬を絞れば経営も給与も変わります。ここが将来性の本体です。押さえるべき動きは3つあります。
① 訪問回数超過等減算(令和6年度〜)
訪問看護ステーションのリハ職に対しては、すでに明確な引き締めが入っています。老企第36号には、こう定められています。
(平成12年3月1日老企第36号 第二の4(4)⑧より引用)
ここで重要なのは、減算の経路が2つあることです。多くの解説は前半(リハ職の訪問回数が看護職員を上回る場合)しか触れませんが、後半の「加算をひとつも算定していない場合」のほうが実務的には厳しいと感じています。
- 経路1:前年度のリハ職の訪問回数 > 看護職員の訪問回数 → 8単位減算
- 経路2:看護職員の回数のほうが多くても、直近6か月に緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない → 8単位減算
経路2は、「看護らしい仕事をしている実績があるか」を問うものです。24時間対応(緊急時訪問看護加算)も、医療処置のある利用者(特別管理加算)も、看取り実績(看護体制強化加算)も無いステーションは、リハ職の比率にかかわらず減算されます。国の意図は「リハ職を減らせ」ではなく、「看護として機能していないステーションを評価しない」という点にあります。
ちびウルフじゃあリハ職が多いステーションは、もうダメってこと?
リハウルフそうとは限りません。減算は1回あたり8単位、およそ80円です。事業所を潰す額ではない。怖いのは金額そのものより、「この方向で改定を続ける」という国の意思表示だという点です。次の改定で幅が広がる可能性を織り込んで職場を見るべきです。
② 令和8年6月、処遇改善加算が新設された
逆風ばかりではありません。令和8年6月から、訪問リハビリテーションと訪問看護に「介護職員等処遇改善加算」が新設されました。これまで両サービスとも対象外だったため、制度開始以来はじめての適用です。
(厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定の概要」より引用)
| サービス | 加算率 |
|---|---|
| (介護予防)訪問リハビリテーション | 1.5% |
| (介護予防)訪問看護 | 1.8% |
| 居宅介護支援・介護予防支援 | 2.1% |
令和8年度改定は3年に1度の定期改定ではなく、賃上げのための期中改定でした。改定率は+2.03%(処遇改善分+1.95%、基準費用額(食費)の引上げ分+0.09%)。基本報酬は据え置きで、増えたのは処遇改善加算だけという構図です。
将来性の観点でこれが重要なのは、在宅リハビリに関わる職種の処遇に、国が初めて直接手を入れたという点です。減算で締める一方、賃金には配慮する——この二面性が、今後の改定の基本形になると考えられます。
③ 令和9年度改定で「提供形態に応じた評価」が予告されている
ここが最も注目すべき箇所です。令和8年度改定の概要には、次の改定に向けた方針が明記されています。
(厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定について」より引用)
「有料老人ホームに関する制度改正の内容も踏まえつつ、サービスの提供形態に応じた評価の在り方」——これは住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅への「集中的な訪問」に対する評価の見直しを示唆しています。同一建物減算はすでにありますが、さらに踏み込む可能性が予告されたわけです。
2040年に向けて需要が構造的に伸びる理由
制度の引き締めがあっても、需要そのものの拡大は動きません。理由は3つです。
- 高齢者人口のピークが2040年代——国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年に65歳以上人口は全人口の約35%に達します。対象者の絶対数が増え続けます。
- 支える現役世代が減る——病床も施設も職員も増やせないため、在宅で支える以外の選択肢がありません。地域包括ケアシステムが国策である理由がこれです。
- 入院期間の短縮が続く——回復期病棟で受けていたリハビリが在宅へ移り、退院直後の集中的なリハビリの受け皿が必要になります。訪問リハビリテーションは、退院(所)の日から3月以内であれば週12回まで算定できる設計になっており、制度もこの流れを想定しています。
つまり「在宅でリハビリを提供する仕事」の総量は確実に増えます。問題は、その仕事がどの制度枠を通って供給されるか、そして誰がその担い手として選ばれるかです。
訪問リハ事業所と訪問看護ステーション、どちらを選ぶか
在宅で働くセラピストの選択肢は、制度上まったく異なる2つに分かれます。
| 比較項目 | 訪問リハビリテーション事業所 | 訪問看護ステーション(リハ職) |
|---|---|---|
| 算定する報酬 | 訪問リハビリテーション費 308単位/回 | 訪問看護費(訪看Ⅰ5)294単位/回 |
| 回数上限 | 1週6回(退院後3月以内は週12回) | 介護保険上の上限なし |
| 開設できる母体 | 病院・診療所・老健・介護医療院のみ (常勤医師が必須) | 法人であれば可 |
| 受給者数の伸び | +2.3% | +6.6% |
| 減算リスク | 訪問回数超過等減算の対象外 | 訪問回数超過等減算の対象 |
| 処遇改善加算(R8.6〜) | 1.5% | 1.8% |
整理すると、制度的な安定性では訪問リハビリテーション事業所、市場の伸びと処遇では訪問看護ステーションという構図です。訪問リハ事業所は医療機関・介護保険施設の一部門であるため減算の直撃を受けにくい一方、母体の給与体系に縛られ、週6回の上限もあります。
どちらが正解ということはありません。ただし訪問看護ステーションを選ぶなら、そのステーションが緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算を算定しているかを確認してください。これらを算定していないステーションは、リハ職の訪問比率にかかわらず減算対象です。経営の安定度がまるで違います。
淘汰の時代に選ばれるセラピストの条件
市場が伸びても、セラピストの総数も増えています。「在宅で働ける人」ではなく「在宅で成果を出せる人」が選ばれる局面に入りました。
- 看護と協働できる専門性を持つ:減算の設計が示すとおり、国が評価しているのは医療依存度の高い利用者を支える体制です。呼吸器・心不全・がん終末期・神経難病など、看護と組んで力を発揮できる領域を持つセラピストは強い。
- 成果を記録し、説明できる:漫然としたリハビリへの引き締めは今後も続きます。ADLの変化を数値と具体例で示し、終了時期の見通しまで語れることが、事業所にとっての防御になります。
- 加算の要件を理解して動く:口腔連携強化加算、退院時共同指導加算、リハビリテーションマネジメント加算——算定要件を知っているセラピストは、事業所の収益に直接貢献します。制度を知ることは、そのまま自分の市場価値です。
- ケアマネと直接つながる:訪問の依頼はケアマネジャーから来ます。担当者会議で的確に発言し、報告書で状態を伝えられる人には依頼が集まります。件数はこの積み重ねで決まります。
- 制度改定を自分で読む:報酬改定のたびに、評価される働き方は変わります。二次情報を待つのではなく、告示・通知の原文にあたる習慣が、10年単位で効いてきます。
リハウルフ訪問リハビリの将来性は、「業界に将来性があるか」ではなく「自分に将来性があるか」の問題に移りつつあります。需要は保証されている。あとは、その需要に応えられる中身を持っているかどうかです。制度を読める人は、改定のたびに強くなります。
訪問リハビリに将来性はありますか?
訪問リハビリ事業所と訪問看護ステーション、どちらの将来性が高いですか?
訪問看護ステーションのリハ職は減らされていくのですか?
令和9年度の介護報酬改定では何が変わりそうですか?
訪問看護ステーションで働くセラピストは何人いますか?
未経験から訪問リハビリに転職しても将来性はありますか?
AIやロボットで訪問リハビリの仕事はなくなりませんか?
訪問リハビリで長く働くために、今から何をすべきですか?
- 在宅リハビリの需要は伸びており、訪問リハビリの仕事が当面なくなることは考えにくい。
- 訪問リハビリテーションの受給者数は年間146.3万人で前年比+2.3%。訪問看護は833.0万人で+6.6%と、伸び幅に3倍近い差がある。
- 通所リハビリテーションは△0.4%で減少に転じており、リハビリの提供は「通う」から「訪問」へ移行している。
- 訪問看護ステーションは18,042事業所(+9.9%)と急増し、PT28,666人・OT12,308人・ST3,527人の計44,501人が在籍している。
- 「訪問リハビリの求人」の多くは、制度上は訪問看護ステーションのセラピスト職である。
- 令和6年度から訪問回数超過等減算(1回8単位)が導入され、リハ職の訪問回数が看護職員を上回る場合に減算される。
- 減算にはもう1つの経路があり、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算をいずれも算定していない場合も対象になる。
- 令和8年6月、訪問リハビリ(1.5%)と訪問看護(1.8%)に処遇改善加算が新設された。在宅リハに関わる職種の処遇に国が初めて直接手を入れた。
- 令和9年度改定では「介護給付の効率化・適正化」「サービスの提供形態に応じた評価の在り方」の検討が予告されている。
- 集合住宅への集中的な訪問に依存した事業所は、制度変更の影響を受けやすい。
- 2040年に65歳以上人口は全人口の約35%。病床も人手も増やせないため、在宅の役割は構造的に大きくなる。
- 将来性の問いは「業界にあるか」から「自分にあるか」へ移っている。看護と協働できる専門性、成果を示す力、制度を読む力が分かれ目になる。
- 厚生労働省「令和6年度 介護給付費等実態統計の概況」(令和6年5月審査分〜令和7年4月審査分)
- 厚生労働省「令和6(2024)年 介護サービス施設・事業所調査の概況」(令和6年10月1日現在)表1・表6
- 厚生省老人保健福祉局企画課長通知「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月1日老企第36号)第二の4
- 厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定について」(「令和8年度介護報酬改定の概要」ほか)
- 厚生労働省老健局「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料の送付について(確定版)」(令和8年5月25日事務連絡)資料1「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
※本記事の統計数値は、厚生労働省が公表した各統計の概況にもとづいて整理したものです。受給者数は年間累計受給者数であり、同一人が複数月にサービスを受けた場合は月ごとに計上されています(実受給者数とは異なります)。単位数・算定要件は告示および留意事項通知にもとづいて整理したものであり、実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。令和9年度介護報酬改定に関する記述は、令和8年度改定の資料に記載された検討方針を引用したものであり、改定内容が確定したものではありません。将来推計人口に関する数値は推計であり、実績を保証するものではありません。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。キャリアや職場選びに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。
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