「訪問リハビリに就職したいけど、将来性はあるの?」
「訪問リハビリは給料が高いと聞くけど将来性はあるの?」
このような疑問を解説する記事です。
今回は、訪問リハビリテーションと訪問看護ステーションからのリハビリの両方を経験した理学療法士の立場で紹介していきたいと思います。
・訪問リハビリの現状(実態)
・訪問リハビリの将来性
訪問リハビリの将来性について解説していきます!
訪問リハビリの実態(現状)
訪問リハビリの将来性の前に、訪問リハビリの現状から整理していきましょう!
高齢者は年々増加している
訪問リハビリの主な対象者は高齢者です。
高齢者がいなければ、訪問リハビリを実施する人がいないことになります。
ですから、まずは市場を見る必要があります。
2021年(現在)から2060年にかけて約40年間は75歳以上及び85歳以上の高齢者が年々増減はあるものの右肩上がりで増加していることがわかります。
これは、これからも訪問リハビリの需要が高いことを意味していると思います。
訪問セラピストが働く場所は主に2つ
訪問セラピストが働く場所は主に下記の2つです。
- 病院・診療所、介護老人保健施設、介護医療院からの訪問リハビリテーション
- 訪問看護ステーション
訪問リハビリテーション事業所は増加傾向
下記は、訪問リハビリテーションの請求事業所数を示したグラフになります。
平成19年から平成31年まで年々、訪問リハビリテーション事業所が増加していることがわかります。
出典)社保審-介護給付費分科会 第182回(R2.8.19)
訪問リハビリテーションの受給者も増加
訪問リハビリテーション事業所数が増加するだけでなく、訪問リハビリテーション受給者も増加しています。
出典)社保審-介護給付費分科会 第182回(R2.8.19)
訪問看護ステーションも年々増加傾向
理学療法士等は訪問看護ステーションでは働けますが、病院・診療所の訪問看護事業所では働くことができません。
下記のグラフを見ると、病院・診療所の訪問看護事業所は年々減少していますが、訪問看護ステーションは年々増加していることがわかります。
よって、理学療法士等が訪問することができる事業所は年々増加しており、働く場所が増えていることがわかります。
出典)社保審-介護給付費分科会 第182回(R2.8.19)
訪問看護事業所数(都道府県別)
訪問看護ステーションは都道府県別で数に差があります。
全国には13000を終える数の訪問看護ステーションがあり、その中でも大阪府と東京都は特別多い地域となっています。
一方、山梨県や鳥取県などは訪問看護ステーションの数が少ない現状です。
出典)社保審-介護給付費分科会 第182回(R2.8.19)
訪問看護ステーションが多い都道府県ランキング
訪問看護ステーションが多い都道府県ランキングを動画で説明しています。
訪問看護ステーションが少ない都道府県ランキング
訪問看護ステーションが少ない都道府県ランキングを動画で説明しています。
訪問看護の受給者数の推移も増加傾向
訪問看護ステーションが増加に伴い、訪問看護の受給者数も年々増加していることがわかります。
訪問看護ステーションの増加だけでなく、実際に訪問看護を受けられている人も多い印象です。
出典)社保審-介護給付費分科会 第182回(R2.8.19)
訪問看護ステーションの理学療法士等が増加傾向
訪問看護ステーションで働く理学療法士、作業療法士、言語聴覚士も年々増加されていることが最近では話題になっております。
訪問看護ステーションに占める理学療法士等の割合は平成13年時点では5.1%でしたが、令和1年時点では22.2%と大幅に増加していることがわかります。
訪問看護ステーションで働く人自体も増加しているため、総人数もかなり増加していることがわかります。
【R元年10月時点】
- 理学療法士等:29,763人(+26,663人)9.6倍
- 理学療法士:19,095人
- 作業療法士:8,226人
- 言語聴覚士:2,442人
出典)訪問看護ステーションにおける職種別の従事者数の推移(常勤換算)
- 生活期リハビリは期限がないため無制限提供可能
- 訪問看護ステーションでもほとんど制限なくリハ可能
- 大阪や東京などの大都市部にセラピストが偏っている
- 訪問リハ事業所も訪問看護ステーションも増加傾向
- 病棟のリハより訪問系の方が給料が高いところが多い
- まだまだ募集しているところも多い
ここまでが訪問リハビリの現状の説明でした。
それを踏まえて『訪問リハビリに将来性はあるのか?』について解説していきます。
訪問リハビリに将来性はあるのか?
訪問リハビリの将来性について色々な側面で見ていきましょう!
訪問看護ステーションではやや肩身が狭くなるかも?
訪問看護ステーションでは6対4問題など、訪問看護ステーションの勤務者の中で6割以上を看護師等にしなければいけないというルールになりそうな流れになっています。
本来の訪問看護ステーションの機能を考えれば当然かもしれません。
現状8割以上セラピストばかりの訪問看護ステーションは今後難しいかもしれませんね。
訪問リハステーションはなかなか難しいのでは?
「訪問看護ステーションがあるのであれば、訪問リハステーションを作れば良いのでは?」という考えの人もいます。
しかし、個人的には難しいのではないか?と思います。
確かに訪問リハステーションがあれば理学療法士等の働く場所は増えますし、訪問リハステーションがあれば訪問リハビリを受けたい利用者さんが訪問リハビリを受けることも可能になりますが、現状の訪問看護ステーションにおいても、国の方向性に沿わないような経営をしている理学療法士等がいる以上、それが悪化してしまうと考えます。
そこに本当に税金を使う意味があるのか?と問われたら、私は難しいと思います。
あとは、政治力次第で実現可能かもしれませんが、どうでしょう。
訪問リハビリテーション事業所はまだまだ増加する?
病院・診療所、介護老人保健施設、介護医療院などからの訪問リハビリテーション事業所はこれからもどんどん増えると考えております。
その理由は下記の動画を参考にしてください。
理学療法士等の全体の人数が増加していく
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の総数は年々増加しております。
養成校もどんどん増加しており、毎年とても多い人数が輩出されています。
そのため、急性期病院や回復期病院で働くセラピストは病院の数にも制限があるため、そこで働きたくても働けない理学療法士等が自然と訪問リハビリテーション事業所や訪問看護ステーションにに溢れてくる可能性は大いにあり得ます。
ICT化が一気に進み、方法自体は変化する可能性も?
最近ではデジタル化が急速に進んでいます。
訪問リハビリでもタブレットを持ち歩くことが当たり前になり、zoomなどのテレビ電話を活用したり、チャットアプリを活用する場面も増えてきています。
ヘルスケア業界では、皮膚状態を撮影するとその状態が分析されたり、歩行状態を撮影することで動作分析ができるアプリ開発も進んでおります。
また、身近なものですとアップルウォッチなどでは血中酸素飽和度や脈拍、心電図なども測定できるようにまでなってきております。
このような技術はさらに加速して成長していくことが予想できます。
また、現在は自動車やバイクや自転車を使用して移動していると思いますが、その移動方法も電気自動車による自動運転(さらには、シェアカー)に変化していくと考えられます。
もしくは介護者も人ではなくロボットで代行できるところも増えてくるでしょう。
このように訪問リハビリの形そのものは変化が見られると思います。
訪問リハビリの制度はどんどん変化する?
訪問リハビリテーションや訪問看護は2000年にできたばかりの制度です。
約3年に一度介護報酬改定があり、約2年に一度診療報酬改定があります。
訪問リハビリの制度の変化の歴史については下記の動画を参照ください。
このように制度自体は時代に合わせて変化しており、まだまだ未完だと思います。
これからも修正されていくことが考えられます。
介護負担割合が1,2,3割からもっと増加する?
介護負担割合は昔は全員共通で1割負担でした。
しかし、介護保険制度存続のために1、2となり、最近では、1、2、3割負担になりました。
現在(令和3年12月)では、まだ原則1割負担で、ほとんどの方が1割負担ですが、これから原則2割になるかもしれないという話も上がってきております。
もし、原則2割になった場合、訪問リハビリの料金は約2倍になるため、お金のことを気にされて、利用者さんが訪問リハビリを辞める人や始めない人も出てくるはずです。
よって、これからの訪問リハビリは、お金に見合うサービスの質を求められてきます。
回復期型訪問リハビリテーションが進む?
急性期や回復期の入院期間は年々制度改正に伴い、入院期間の短縮がされてきています。
病床数は限られている中で、高齢者や要介護者、病気になる方が増えているため、仕方のないことだと思います。
少し前から現場では感じておりますが、今まででは回復期病棟でまだリハビリをされていたであろう層の利用者が訪問リハビリを受けている場合がちらほら見られております。
令和3年度介護報酬改定では、訪問リハビリテーションでは退院(所)後から3ヶ月間は週12回(240分)の訪問リハビリが可能になりました。
このような制度改定の背景もあり、これからは回復期型の訪問リハビリテーションに変化していくことも予想できます。
特化型の訪問セラピストが優遇される?
これからは訪問看護ステーションも訪問リハビリテーション事業所も増えると思います。
そうすると、事業所の色を作らなければ生き残れなくなる可能性もあります。
そうすると、その事業所に合うセラピストを集めたいと感じる管理者が出てきます。
そこで、重宝されるのが、特化型の訪問セラピストです。
それは、例えば下記のような人です。
- 小児が得意なセラピスト
- 終末期が得意なセラピスト
- 脳卒中が得意なセラピスト
- 呼吸器が得意なセラピスト
普通の能力のセラピストはこれからの時代あふれることが予想できるため、普通のセラピストの価値は低くなります。
よって、何かしらの得意分野のあるセラピストを目指すことと訪問セラピストとしての将来は明るくなるのではないでしょうか。
認定や専門のセラピストもその一つの選択肢だと思います。
あと40年くらいは訪問リハビリは必ず仕事はある
訪問リハビリの将来性といいましても、いつの将来性かにもよると思います。
今が2021年ですから、2060年くらいまでの40年間は訪問リハビリは仕事はあると思います。
日本は新しいものを嫌う文化もあるため、今でも介護保険分野では、FAXや電話が基本です。
確かにテクノロジーは発展するとは思いますが、それに医療介護分野のオーナーがついていけないという事態が陥るためです。
よって、高齢者が増えるあと40年間は確実に仕事があると思います。
センスによって仕事が取れる人と取れない人が生じる
訪問リハビリ自体の仕事は向こう40年あると思います。
しかし、競争相手(多い数のセラピスト)も増えるため、年収・給料・待遇に差が生まれることは間違いありません。
誰でもできる仕事ではなく、その人でしかできない働き方をするセンスが問われる時代かもしれませんね。
よって、訪問リハビリの将来性があるか否かはその人によっても変わるかもしれません。
訪問リハビリの期間が限定される可能性はある
現在(令和3年12月)時点では、生活期のリハビリではリハビリを受けることができる期間の制約はありません。
そのため、残念ながら、だらだらリハビリが一番儲けることができるビジネスモデルとなっています。
もし、生活期においてリハビリの期間が制限された場合、ダラダラリハビリモデルでしか経営できない経営者の事業所は今後は存続が難しいと思います。
誰の元でどんな会社・法人で働くかも訪問セラピストの将来性には影響してくるかもしれませんね。
訪問リハビリの実態と将来性についての動画
訪問リハビリの実態と将来性についての動画です。
下記からご視聴ください。