看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の退院時共同指導加算は、1回600単位です。原則は退院・退所につき1回ですが、特別な管理を必要とする利用者については2回まで算定できます。

この加算でつまずきやすいのは、共同指導を行っただけでは算定できないという点です。退院・退所後に初回の訪問看護サービスを実施して、はじめて算定できます。共同指導の翌日に他のサービスに切り替わった、そのまま入院が続いた、というケースでは算定できません。

この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のルと、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第53号・第6号の原文を確認して整理しました。

この記事でわかること
  • 退院時共同指導加算600単位の算定要件
  • 2回算定できる「特別な管理を必要とする利用者」の中身
  • 共同指導だけでは算定できず、初回の訪問看護が必要なこと
  • 共同指導を行える職種(保健師・看護師・PT・OT・ST)
  • 対象となる入院・入所先の範囲
  • 初期加算30単位との併算定の考え方
  • 訪問看護の退院時共同指導加算との違い
  • 実務でつまずきやすい場面
ちびウルフちびウルフ

退院前カンファレンスに参加すれば600単位、ということではないんですか?

リハウルフリハウルフ

それだけでは足りません。条文は「退院時共同指導を行った後、当該者の退院又は退所後、当該者に対する初回の訪問看護サービスを行った場合に」と書いています。カンファレンス+退院後の初回訪問看護、この2つがそろって算定です。参加した時点では、まだ算定要件を満たしていません。

看多機の退院時共同指導加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護の退院時共同指導加算は、病院等を退院・退所するにあたって、看多機事業所の看護職員等が入院先の職員と共同で指導を行い、退院後に初回の訪問看護サービスを提供した場合に算定する加算です。告示126号 複合型サービス費のルに規定されています。

看多機は在宅療養の受け皿として位置づけられており、入院・入所からの移行がスムーズかどうかが支援の質を左右します。退院直後の状態悪化・再入院を防ぐには、退院前に病院側と情報をそろえておくことが決定的に重要です。その手間を評価するのがこの加算です。

令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。

退院時共同指導加算の単位数

退院時共同指導加算 600単位
注 イについては、病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に入院中又は入所中の者が退院又は退所するに当たり、指定看護小規模多機能型居宅介護事業所の保健師、看護師又は理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が退院時共同指導を行った後、当該者の退院又は退所後、当該者に対する初回の訪問看護サービス(略)を行った場合に、当該退院又は退所につき1回特別な管理を必要とする利用者(略)については2回)に限り、所定単位数を加算する。

項目内容
単位数600単位
算定頻度1回の退院・退所につき1回(特別な管理を必要とする利用者は2回)
対象イ(看護小規模多機能型居宅介護費)
届出条文上、届出の定めはない

他の看多機の加算と違い、ルの注には「届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が」という文言がありません。体制の届出を前提としない加算という点は、実務上おさえておくと迷いが減ります。

退院時共同指導加算の算定要件

4つの要件

要件内容
①対象の入院・入所先病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院に入院中または入所中であること
②実施する職種看多機事業所の保健師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
③退院時共同指導退院・退所するにあたって共同指導を行うこと
④初回の訪問看護サービス退院・退所後、その方に対する初回の訪問看護サービスを行うこと

対象施設に特別養護老人ホームは入っていない

①の列挙は病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院の4つです。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は入っていません。特養からの退所で共同指導を行っても、この加算の対象にはならないという整理です。

准看護師は含まれていない

②の職種は保健師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士です。准看護師は列挙されていません。准看護師が共同指導に同席すること自体は問題ありませんが、加算の要件を満たす職種として単独で対応すると算定根拠が崩れます。

「初回の訪問看護サービス」の意味

④の訪問看護サービスは、条文で「利用者の居宅を訪問して行う指定地域密着型サービス基準第177条第10号に規定する看護サービス」と定義されています。

  • 居宅を訪問して行うものであること(通いや泊まりでの看護では要件を満たさない)
  • 看護サービスであること(介護職員による訪問サービスでは足りない)

退院直後にまず通いから始める、というプランを組むと算定できません。看多機は柔軟に組み合わせられるサービスなので、ここは意識して初回に訪問看護を入れる必要があります。

2回算定できる「特別な管理を必要とする利用者」

告示94号 第53号は、ルの注の「厚生労働大臣が定める状態」として第6号を引いています。特別管理加算の対象状態と同じものです。

状態
在宅麻薬等注射指導管理/在宅腫瘍化学療法注射指導管理/在宅強心剤持続投与指導管理/在宅気管切開患者指導管理を受けている状態、気管カニューレまたは留置カテーテルを使用している状態
在宅自己腹膜灌流/在宅血液透析/在宅酸素療法/在宅中心静脈栄養法/在宅成分栄養経管栄養法/在宅自己導尿/在宅持続陽圧呼吸療法/在宅自己疼痛管理/在宅肺高血圧症患者の各指導管理を受けている状態
人工肛門または人工膀胱を設置している状態
真皮を越える褥瘡の状態
点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態

特別管理加算と違い、2回算定の可否については(Ⅰ)と(Ⅱ)の区別がありません。イ〜ホのいずれかに該当すれば2回まで算定できます。

この点は実務で使えます。特別管理加算を算定している方は、そのまま退院時共同指導加算の2回算定の対象と考えて差し支えありません。台帳を突き合わせるだけで判断できます。

初期加算との関係

加算単位数算定期間評価している内容
退院時共同指導加算600単位退院・退所につき1回(2回)退院前の病院等との共同指導
初期加算30単位/日登録日から30日以内登録直後の手厚い支援

告示に併算定を制限する定めはありません。30日を超える入院後に利用を再開した場合は初期加算も再び算定できるため、長期入院からの退院では両方の対象になり得ます。

訪問看護の退院時共同指導加算との違い

項目看多機訪問看護
単位数600単位600単位
算定回数1回(特別な管理を必要とする者は2回)同じ
対象施設病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院同じ
実施職種保健師・看護師・PT・OT・ST同じ
算定の前提退院後の初回の訪問看護サービス退院後の初回の訪問看護

枠組みはほぼ同じです。看多機ならではの注意点は、通い・泊まりという選択肢があるために「初回が訪問看護でない」事態が起こりやすいことだと思います。訪問看護事業所なら初回は必ず訪問看護ですが、看多機はそうとは限りません。

退院時共同指導加算の注意点

共同指導後に退院しなかった場合

条文は「退院又は退所後、当該者に対する初回の訪問看護サービスを行った場合に」と定めています。共同指導を行ったが状態が悪化して退院が延期になった、そのまま亡くなった、という場合は要件を満たさず算定できません。

担当したケースでも、退院前カンファレンスの3日後に状態が急変して退院が流れたことがありました。準備の手間は同じでも、算定はできません。この加算は「移行が成立したこと」に対する評価だと理解しておくほうが、後で落胆せずに済みます。

共同指導の実施方法

告示本文は「退院時共同指導を行った後」とのみ規定しており、対面かオンラインか、何を指導するのかまでは書かれていません。実施方法や記録の要件は留意事項通知および市町村の取扱いによります。参加者・日時・指導内容を記録に残し、病院側の記録とも整合させておいてください。

2回算定する場合の間隔

特別な管理を必要とする利用者について2回算定する場合、2回の共同指導をどの程度の間隔で行うべきかは告示に定めがありません。同日に2回行って2回算定できるのかどうかも、条文からは読み取れません。市町村に確認してください。

短期利用居宅介護費には加算されない

ルの注は「イについては」と書かれています。対象は看護小規模多機能型居宅介護費であり、短期利用居宅介護費には加算されません。

算定前に確認したいこと
  • 入院・入所先が病院・診療所・老健・介護医療院のいずれかか(特養は対象外)
  • 共同指導を行ったのが保健師・看護師・PT・OT・STか
  • 退院・退所後の初回サービスに訪問看護を組み込んでいるか
  • 告示94号第6号の状態に該当し、2回算定できる方ではないか
  • 共同指導の参加者・日時・内容を記録に残しているか

よくある質問

看多機の退院時共同指導加算はいくらですか?

1回600単位です。退院または退所につき1回、特別な管理を必要とする利用者については2回まで算定できます。

共同指導に参加しただけで算定できますか?

できません。共同指導を行った後、退院・退所後に初回の訪問看護サービスを行うことが要件です。

2回算定できるのはどういう方ですか?

告示94号第6号の状態に該当する方です。気管カニューレ・留置カテーテルの使用、在宅酸素療法などの指導管理、人工肛門・人工膀胱、真皮を越える褥瘡、点滴注射週3日以上などが含まれます。

特養からの退所でも算定できますか?

できません。対象は病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院です。

共同指導は誰が行う必要がありますか?

看多機事業所の保健師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士です。准看護師は列挙されていません。

退院後の初回が通いでも算定できますか?

できません。条文は「利用者の居宅を訪問して行う看護サービス」と定義しています。初回に訪問看護を組み込む必要があります。

共同指導後に退院が中止になった場合は?

算定できません。退院・退所後の初回の訪問看護サービスが要件だからです。

初期加算と併算定できますか?

告示に併算定を制限する定めはありません。30日を超える入院後の再開であれば初期加算も改めて算定できます。

届出は必要ですか?

ルの注に届出の定めはありません。他の加算と異なり、体制の届出を前提としない書き方になっています。

2回算定する場合の間隔に決まりはありますか?

告示に定めはありません。市町村の取扱いを確認してください。

オンラインでの共同指導でも算定できますか?

告示本文に実施方法の定めはありません。留意事項通知および市町村の取扱いによります。

短期利用の利用者にも算定できますか?

できません。ルの注は「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。

まとめ
  • 看多機の退院時共同指導加算は1回600単位
  • 対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)で、短期利用は対象外
  • 退院・退所につき1回、特別な管理を必要とする利用者は2回まで
  • 2回算定の対象は告示94号第6号の状態(特別管理加算と同じ)
  • (Ⅰ)(Ⅱ)の区別はなく、イ〜ホのいずれかに該当すれば2回
  • 対象施設は病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院
  • 特別養護老人ホームは対象に含まれていない
  • 共同指導を行う職種は保健師・看護師・PT・OT・ST(准看護師は含まれない)
  • 共同指導だけでは算定できず、退院後の初回の訪問看護サービスが必要
  • 初回が通いや泊まりでは要件を満たさない
  • 共同指導後に退院が中止になった場合は算定できない
  • 条文上、届出の定めがない加算である
  • 初期加算との併算定を制限する定めはない
  • 共同指導の実施方法や2回算定の間隔は告示に定めがなく、市町村の取扱いによる
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに退院時共同指導の実施方法(対面・オンラインの可否)、記録の要件、2回算定する場合の間隔、共同指導から退院までの期間の上限については告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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