通所介護の虐待防止・BCP減算とは?

通所介護の高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算は、いずれも所定単位数の100分の1(1%)です。
この2つは通所介護の減算のなかで最も率が小さいものですが、性質が他と大きく違います。
同一建物減算や送迎減算は「その利用者にその事情があるから引く」ものです。この2つは「事業所に体制がないから、全利用者の全請求から引く」ものです。
1%という率は小さく見えますが、対象が事業所の全利用者・全利用日に及びます。そして体制が整うまで続きます。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生労働省告示第19号)通所介護費の注2・注3と、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)十四の三・十四の四を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 2つの減算がいずれも1%であること
- それぞれが参照する運営基準の条文
- 虐待防止に必要な4つの措置
- BCPは感染症と災害の両方が必要であること
- 2つが重複して減算されること
- 通所介護には身体拘束廃止未実施減算がないこと
ちびウルフデイには身体拘束の減算はないんですか? 特養にはあるって聞きました。
リハウルフ通所介護費に身体拘束廃止未実施減算の規定はありません。減算があるのは高齢者虐待防止措置未実施と業務継続計画未策定の2つです。ただし身体拘束が許されるという意味ではまったくありません。身体拘束は虐待に該当しうる行為であり、虐待防止措置の対象そのものです。減算の規定がないことと、やってよいことは別ですね。
通所介護の高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算とは?
通所介護の高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算は、運営基準で義務づけられた体制が整っていない場合に、基本報酬から差し引かれる減算です。
どちらも令和3年度改定で運営基準に義務が加わり、経過措置を経て令和6年度改定で減算として制度化されたものです。
共通するのは、「委員会・指針・研修」という体制の継続が求められている点です。一度作って終わりではなく、定期的に開催・実施していることが要件になります。
通所介護の2つの減算の減算率
| 減算 | 減算率 | 条文 |
|---|---|---|
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の100分の1 | 注2 |
| 業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の100分の1 | 注3 |
2 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
3 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、業務継続計画未策定減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
他サービスとの比較
| サービス | 虐待防止 | BCP | 身体拘束 |
|---|---|---|---|
| 通所介護 | 1% | 1% | 規定なし |
| 小規模多機能型居宅介護 | 1% | 1% | 1% |
| グループホーム | 1% | 3% | 10% |
| 特養・老健・介護医療院 | 1% | 3% | 10% |
BCPが3%になるのは入所・入居系のサービスです。通所介護は1%にとどまっています。
通所介護の2つの減算の算定要件
高齢者虐待防止措置未実施減算
基準は指定居宅サービス等基準第105条または第105条の3において準用する第37条の2への適合です。
- 虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること
- 虐待の防止のための指針を整備すること
- 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
- これらの措置を適切に実施するための担当者を置くこと
委員会・指針・研修・担当者の4点です。1つでも欠ければ減算の対象になります。(各号の具体的内容は運営基準によります。詳細は原文をご確認ください)
業務継続計画未策定減算
基準は指定居宅サービス等基準第105条または第105条の3において準用する第30条の2第1項への適合です。
- 感染症の発生およびまん延等に関する業務継続計画を策定していること
- 非常災害の発生時における業務継続計画を策定していること
- 計画に従い必要な措置を講じていること
どちらか一方しか策定していない場合は、減算の対象になり得ます。コロナ禍を経て感染症BCPは整備した事業所が多い一方、災害BCPが手つかずというケースは実際にあります。(実務に関する記述は筆者の経験にもとづく整理です)
第105条と第105条の3の使い分け
基準が2つの条文を挙げているのは、通常の通所介護(第105条)と共生型通所介護(第105条の3)の両方をカバーするためと読めます。どちらの事業所も同じ第37条の2・第30条の2第1項の基準に適合していることが求められます。
通所介護の2つの減算の注意点
注2と注3はそれぞれ独立した規定です。両方の基準を満たさない場合、2つとも減算されます。合計で2%です。
さらに定員超過や人員欠如に該当していれば、70%算定の対象にもなります。これらが重なった場合の計算順序は、請求システムの取扱いと指定権者の解釈を確認してください。
身体拘束の規定がないことの意味
通所介護費には身体拘束廃止未実施減算がありません。しかし身体拘束は高齢者虐待防止法上、身体的虐待に該当しうる行為です。
通所介護の現場でも、車いすのベルト、離設を防ぐための施錠、行動を制止する声かけなど、拘束に当たりうる場面はあります。減算の規定がないからといって、虐待防止措置の対象外になるわけではありません。
「作って終わり」では要件を満たさない
2つに共通するのは継続性です。
指針を作った年に研修を1回やって、その後何もしていない状態は「定期的に実施している」とは言えません。実地指導では委員会の開催記録、研修の実施記録、参加者名簿が確認されます。(実地指導の運用に関する記述は筆者の実務経験にもとづく整理です)
点検の進め方
- 虐待防止委員会の直近の開催記録を確認する
- 虐待防止の担当者が指定されているか確認する
- 虐待防止の指針が整備されているか確認する
- 研修の年間計画と実施記録を確認する
- BCPが感染症・災害の両方あるか確認する
- BCPに基づく訓練の実施状況を確認する
通所介護の2つの減算のQ&A
減算率は何%ですか?
どちらも所定単位数の100分の1です。
2つ同時に減算されますか?
あります。注2と注3はそれぞれ独立した規定です。
通所介護に身体拘束廃止未実施減算はありますか?
通所介護費に該当の規定はありません。ただし身体拘束は虐待防止措置の対象となる行為です。
BCPは感染症だけでよいですか?
感染症と非常災害の両方が求められます。
虐待防止の担当者に資格は必要ですか?
基準に資格の限定はありません。詳細は運営基準の原文と指定権者の取扱いを確認してください。
委員会は他の会議と兼ねられますか?
取扱いは指定権者によります。検討内容と結果の周知が記録上追えることが必要です。
研修は年に何回必要ですか?
基準は「定期的に実施すること」としています。回数は指定権者の取扱いを確認してください。
減算はいつからいつまで続きますか?
基準を満たさない状態が続く間が対象です。開始・終了の具体的な取扱いは指定権者に確認してください。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算はいずれも1%
- 2つとも該当すれば重複して減算される
- 虐待防止は委員会・指針・研修・担当者の4点が必要
- BCPは感染症と非常災害の両方が必要
- 基準は指定居宅サービス等基準の第37条の2・第30条の2第1項
- 共生型通所介護も同じ基準が適用される
- 通所介護費に身体拘束廃止未実施減算の規定はない
- ただし身体拘束は虐待防止措置の対象となる行為
- 「作って終わり」では要件を満たさず継続的な実施が必要
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生労働省告示第19号)別表 通所介護費の注2、注3(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)十四の三、十四の四(厚生労働省法令等データベース)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第105条、第105条の3、第37条の2、第30条の2
※本記事の減算率・要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。運営基準の各号の具体的内容は省令の原文をご確認ください。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・政令市・中核市)の解釈をご確認ください。解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。委員会の開催頻度、他の会議体との兼務の可否、研修の回数、担当者の要件、減算の開始・終了時期、他の減算と重なった場合の計算順序については所在自治体に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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