「デイサービスの機能訓練ってリハビリと何が違うの?」「理学療法士がいるのに、なぜリハビリと呼ばないの?」——通所介護の現場では、こうした疑問がよく聞かれます。言葉の使い分けがあいまいなまま使われているため、利用者さんやご家族はもちろん、働くスタッフでも混乱しやすいテーマです。

この記事では、介護保険制度における機能訓練の正しい意味と、リハビリテーションとの明確な違いを、理学療法士の視点でわかりやすく整理します。機能訓練指導員になれる資格や、加算のしくみまで押さえれば、現場での説明にも自信が持てるようになります。

この記事でわかること
  • デイサービス(通所介護)における機能訓練とは何か
  • 機能訓練とリハビリテーションの制度上の違い
  • 機能訓練指導員になれる資格と、令和3年度改定での要件緩和
  • 個別機能訓練加算のしくみと、現場での実践ポイント

機能訓練とは?デイサービスで行う「生活機能を保つための訓練」

結論から言うと、機能訓練とは、日常生活を営むのに必要な身体機能の低下を防ぐために行う訓練のことです。デイサービス(通所介護)などで実施され、歩行や立ち座り、関節の動きや筋力の維持・向上を目的とします。

実は、介護保険制度には「機能訓練とは〇〇である」という厳密な定義文があるわけではありません。条文上は「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練」と表現されており、おおむね身体機能を維持・向上させるための訓練と理解しておけば現場では十分です。

ちびウルフちびウルフ

機能訓練って、リハビリと同じものじゃないの?

リハウルフリハウルフ

世間一般ではほぼ同じ意味で使われるけど、介護保険の制度上はハッキリ区別されているんだ。ここがこの記事のいちばん大事なところだよ。

機能訓練とリハビリテーションの違いは「医師の指示」の有無

介護保険制度のうえで「リハビリテーション」と呼べるのは、次のサービスだけです。

介護保険でリハビリと呼ばれるサービス訪問リハビリテーション/通所リハビリテーション(デイケア)/介護老人保健施設(老健)のリハビリ/介護医療院のリハビリ

つまり、デイサービス(通所介護)は、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士が実施しても、介護保険法上は「リハビリテーション」ではなく「機能訓練」に分類されます。両者を分ける最大のポイントは、医師の指示が必要かどうかです。

項目リハビリテーション機能訓練
医師の指示必要(指示にしたがって実施)不要
主な提供場所訪問リハ・通所リハ・老健・介護医療院デイサービス・特養・ショートステイ など
実施できる職種PT・OT・ST(医師の指示下)機能訓練指導員(後述の有資格者)

デイサービスで理学療法士が訓練を行っても医師の指示は不要、という点は、現場で混乱しやすいので押さえておきましょう。あくまで介護保険の制度上の区分であり、一般的な会話で「リハビリ」と言う場合は機能訓練も含めて呼ぶことがほとんどです。

機能訓練指導員になれる資格・条件

デイサービスには「機能訓練指導員」を配置します。機能訓練指導員になれるのは、次の資格を持つ人です。

機能訓練指導員になれる資格
理学療法士(PT)
作業療法士(OT)
言語聴覚士(ST)
看護職員(看護師・准看護師)
柔道整復師
あん摩マッサージ指圧師
はり師・きゅう師(一定の実務経験がある場合・令和3年度改定で追加)
注意:はり師・きゅう師の追加要件令和3年度の介護報酬改定で、人材確保の観点から「一定の実務経験を有するはり師・きゅう師」も機能訓練指導員になれるようになりました。この「一定の実務経験」とは、機能訓練指導員を配置している事業所で6か月以上、機能訓練指導に従事した経験を指します。実務時間や日数の細かい規定はなく、十分な経験を得たと管理者が判断できることが前提とされています。

機能訓練指導員の配置が必要なサービス

機能訓練指導員の規定があるのは、デイサービスだけではありません。次のサービスでも配置が定められています。

機能訓練指導員の規定があるサービス通所介護(デイサービス・地域密着型含む)/短期入所生活介護(ショートステイ・介護予防含む)/認知症対応型通所介護(認知症デイ・介護予防含む)/特定施設入居者生活介護(介護予防・地域密着型含む)/介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・地域密着型含む)

個別機能訓練加算とは?「誰が実施するか」がポイント

機能訓練に関連して必ず出てくるのが個別機能訓練加算です。これは、機能訓練指導員が利用者一人ひとりの目標に沿った個別機能訓練計画をつくり、計画に基づいて訓練を実施した場合などに算定できる加算です。

ここで大切なのが、「機能訓練」そのものは誰が実施してもよいが、加算を取るには機能訓練指導員の関与が必要という区別です。実際、利用者の日常生活やレクリエーション・行事を通じて行う機能訓練については、生活相談員や介護職員が兼務して行っても差し支えないとされています。

単位数は最新の告示で確認を個別機能訓練加算は(I)(II)などに区分され、(II)はLIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出とフィードバック活用が要件です。単位数や要件は介護報酬改定のたびに見直されるため、算定にあたっては令和6年度の最新の告示・自治体の通知を必ず確認してください。

リハ職(PT・OT・ST)・看護職の視点|現場での向き合い方

制度上「リハビリ」ではなく「機能訓練」だからといって、提供するケアの質を下げてよい理由にはなりません。むしろ医師の指示がない分、機能訓練指導員自身が利用者の生活課題をアセスメントし、目標を立てる力が問われます。

  1. 生活場面の困りごと(歩行・トイレ・入浴など)から訓練目標を逆算する
  2. 個別機能訓練計画に、達成可能で測定できる目標を具体的に書き込む
  3. 介護職員と目標を共有し、訓練以外の時間も生活リハビリにつなげる
  4. 定期的に評価し、計画を見直す(LIFE活用時はフィードバックを反映)

看護職員が機能訓練指導員を担う事業所も多くあります。その場合も、バイタルや既往を踏まえたリスク管理と、生活機能の視点を両立させることが、利用者の「できる生活」を支える鍵になります。

「機能訓練」と「個別機能訓練」は何が違う?

現場でよく混同されるのが、「機能訓練」と「個別機能訓練」という2つの言葉です。整理すると次のようになります。

用語意味実施者
機能訓練身体機能の低下を防ぐための訓練全般。レクや行事を通じたものも含む。生活相談員や介護職員でも可
個別機能訓練利用者ごとの個別機能訓練計画に基づいて行う、目標に沿った訓練。加算の対象。機能訓練指導員が中心となって関与

つまり、「機能訓練」は広い概念で、そのなかでも計画に基づいて個別に行うものが「個別機能訓練」という関係です。加算(個別機能訓練加算)の対象になるのは後者であり、機能訓練指導員の関与が前提になります。デイサービスのパンフレットや重要事項説明書で「機能訓練を実施」とあっても、それが加算対象の個別機能訓練かどうかは別の話、という点は利用者・家族への説明でも誤解されやすいところです。

ちびウルフちびウルフ

「機能訓練あり」って書いてあっても、加算の個別機能訓練とは限らないんですね。

リハウルフリハウルフ

そのとおり。利用者さんやご家族に説明するときは、ここを丁寧に伝えてあげると親切だね。

機能訓練を選ぶときに利用者・家族が確認したいこと

デイサービスで機能訓練を受けたいと考えるとき、利用者やご家族は次の点を確認しておくと、ミスマッチを防げます。

確認したいポイントどんな職種(PT・OT・ST・看護職員など)が機能訓練に関わっているか/個別機能訓練計画を作成してもらえるか/本人の生活目標(歩きたい・トイレを自分でなど)に沿った内容か/家での生活につながる助言があるか

「リハビリのような関わりを期待していたのに、集団体操だけだった」というギャップは、事前確認で防げます。大切なのは資格名そのものより、本人の生活課題に合った機能訓練が受けられるかです。見学や体験利用の際に、機能訓練の進め方を具体的に聞いてみるとよいでしょう。

機能訓練に関するよくある質問

デイサービスの機能訓練に医師の指示は必要ですか?
不要です。介護保険制度上、デイサービス(通所介護)で行うものは「機能訓練」に分類され、医師の指示がなくても実施できます。医師の指示が必要なのは、通所リハビリや訪問リハビリなどの「リハビリテーション」です。
機能訓練とリハビリは結局どう違うのですか?
一般的な意味ではほぼ同じですが、介護保険制度上は明確に区別されます。医師の指示にしたがって行うのがリハビリテーション、医師の指示が不要なのが機能訓練です。提供場所も、リハビリは通所リハ・訪問リハ・老健・介護医療院に限られます。
機能訓練は介護職員が行ってもよいのですか?
機能訓練そのものは、レクリエーションや行事を通じて行う場合など、生活相談員や介護職員が兼務して実施しても差し支えありません。ただし、個別機能訓練加算を算定するには、機能訓練指導員による計画作成と関与が必要です。
はり師・きゅう師でも機能訓練指導員になれますか?
令和3年度の介護報酬改定により、一定の実務経験(機能訓練指導員配置事業所での6か月以上の従事経験)があるはり師・きゅう師も機能訓練指導員になれるようになりました。
まとめ
  • 機能訓練とは、日常生活に必要な身体機能の低下を防ぐための訓練。デイサービスなどで実施される。
  • 介護保険制度上、機能訓練とリハビリの違いは「医師の指示の有無」。リハビリは指示が必要、機能訓練は不要。
  • 介護保険で「リハビリ」と呼べるのは、訪問リハ・通所リハ・老健・介護医療院の4つだけ。
  • 機能訓練指導員になれるのはPT・OT・ST・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師、令和3年度改定で一定の実務経験のあるはり師・きゅう師も追加。
  • 個別機能訓練加算の算定には機能訓練指導員の関与が必要。単位数は最新の告示で確認を。

出典:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」/社保審-介護給付費分科会 第153回(H29.11.29)資料/令和3年度・令和6年度介護報酬改定関連資料

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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