「訪問リハビリ事業所が潰れるのは、いったい何が原因なんだろう?」
「赤字を出さずに、安定して経営を続けるにはどこに気をつければいい?」

毎日まじめに訪問しているのに、なぜか収支が合わない。そんなモヤモヤを抱える管理者・経営者は少なくありません。じつは訪問リハビリが潰れる理由にはいくつかの「典型パターン」があり、裏を返せば、そこを押さえれば経営は十分に立て直せます。この記事では、現場と数字の両面から「潰れる理由」と「安定経営のポイント」を、訪問リハ歴10年以上のPT目線でわかりやすく整理しました。

この記事でわかること
  • 訪問リハビリ事業所が潰れる代表的な9つの理由
  • 赤字に直結する「訪問件数」と「経費」の考え方
  • 安定経営のために今日から見直せる具体策
  • 収支を改善するための数字の追い方(20分換算・稼働率)

訪問リハビリが潰れるのは「複数の要因」が重なるから

ちびウルフちびウルフ

訪問リハビリって、何か1つ失敗すると潰れちゃうの?

リハウルフリハウルフ

いい質問だね。実は「1つの致命的なミス」より、小さな赤字要因がいくつも重なって立ち行かなくなるケースの方がずっと多いんだ。

訪問リハビリ事業所が赤字に陥る原因は、一つに絞れるものではありません。訪問件数の少なさ、職員の確保難、経費の増大、事故リスク——これらが複雑に絡み合って経営を圧迫します。

どれか1つでも問題になれば経営は揺らぎますが、複数が重なると一気に立て直しが難しくなります。とくに訪問件数の不足リハビリの質の低下による利用者減は、収益に直接ダメージを与えます。まずは「自分の事業所はどの要因を抱えているか」を棚卸しすることが、立て直しの第一歩です。

訪問リハビリが潰れる9つの理由

現場でよく見られる「潰れる理由」を9つに整理しました。当てはまるものがないか、チェックしながら読み進めてください。

潰れる理由主な影響
① 職員1人あたりの訪問件数が少ない売上が伸びず固定費を回収できない
② 車の事故が多く保険料が高い修理費・保険料で経費が膨らむ
③ 利用者数の増減が激しい収益が読めず計画が立たない
④ 他部署と兼務していない収益が単一で変動に弱い
⑤ 事業所の規模が小さい固定費負担が重く耐性が低い
⑥ 利用者の卒業が多い新規確保が追いつかず売上減
⑦ セラピスト・リハの質が低い利用者離れ・紹介減につながる
⑧ 家賃が高い固定費が利益を圧迫する
⑨ リハ以外に時間をかけすぎ訪問件数が減り売上が下がる

① 職員1人あたりの訪問件数(売上)が少ない

訪問リハビリでは、職員1人あたりの訪問件数が経営の最重要指標です。件数をしっかりこなせれば売上は安定しますが、件数が少なければそのまま収益減に直結します。原因は職員不足、移動時間の長さ、1件あたりの時間延長などさまざまです。

ポイント件数管理のコツは、営業日平均の訪問件数を「20分1コマ」で算出すること。訪問リハは40分・60分訪問が混在するため、20分を1単位に換算すると目標が明確になります。職員が休んだ日を除外して平均を出すと実態が見えなくなるので、必ず営業日ベースで計算しましょう。

② 車の事故が多く、車の保険料が高い

訪問リハは自動車移動が基本のため、事故が多発する事業所は保険料が高騰し、経営を圧迫します。事故のたびに修理費・等級ダウンによる保険料増が積み重なります。安全運転教育、ドライブレコーダー導入、ヒヤリハット共有など、事故を「起こさない仕組み」づくりが経費削減に直結します。

③ 利用者数の増減が激しい

利用者数が安定しないと収益が読めず、採用や設備投資の計画も立てにくくなります。地域の高齢者人口の変動や競合との奪い合いが背景にあることも。新規の入口(ケアマネ・病院との連携)と、利用継続の仕組みを両輪で整え、登録者数の波を小さくすることが安定経営のカギです。

④ 他部署と兼務していないため安定しない

訪問看護・外来リハ・病棟リハなど複数サービスを併設すると、収益が多角化し、リスクを分散できます。訪問リハ単独だと利用者数や職員数の変動にもろに影響を受けがちです。兼務体制があれば、セラピストが休みやすい体制づくりにもつながり、離職防止の面でもプラスに働きます。

⑤ 事業所の規模が小さい

規模が小さいと職員・利用者数が限られ、収益変動への耐性が弱くなります。固定費・設備費の比率も高くなりがちです。適切なタイミングで人員と利用者を増やし、損益分岐点を超える稼働を確保することが、安定への近道です。

⑥ 利用者の卒業が多い

訪問リハは目標達成後に「卒業」するのが本来の姿ですが、卒業が多い事業所では新規確保が追いつかないと売上が減ります。短期完結ケースが多い場合はとくに注意が必要です。卒業後も他サービス(通所・訪問看護等)につなげる導線を整え、関係を切らさない仕組みをつくりましょう。

⑦ セラピストの質・リハビリの質が悪い

訪問リハの成否はセラピストの技術と対応力に大きく左右されます。質が低ければ利用者は離れ、紹介も減ります。教育・研修・症例検討を継続し、「この人に来てほしい」と思われるリハを提供することが、リピートと紹介を生み、結果的に経営を支えます。

⑧ 家賃が高い

立地によっては家賃が固定費を大きく圧迫します。都市部や需要の高い地域では特に顕著です。利用者の利便性と家賃のバランスを見極め、固定費に見合う稼働が取れているかを定期的に検証しましょう。場合によっては移転も選択肢です。

⑨ 訪問リハビリ以外に時間をかけすぎている

報告書作成、事務手続き、会議・委員会が膨らむと、本来のリハ業務に割ける時間が減り、訪問件数が落ちます。ICT・記録システムの活用で事務を効率化し、1日でも多く訪問に時間を使える体制を整えることが、地味ですが確実な収益改善策です。

注意「忙しいのに儲からない」事業所の多くは、訪問件数そのものより非訪問業務の比率が高い傾向があります。まずは1週間、業務時間の内訳を記録してみると、削れる時間が見えてきます。

安定経営のために押さえるべき3つの視点

ちびウルフちびウルフ

潰れないためには、結局どこから手をつければいいの?

リハウルフリハウルフ

「数字を見る・件数を増やす・人を育てる」。この3つを順番に回していけば、たいていの事業所は立て直せるよ。

潰れる理由が分かったら、次は対策です。経営の立て直しは、次の手順で進めると整理しやすくなります。

  1. 数字を可視化する……20分換算の訪問件数、稼働率、1人あたり売上、経費内訳を毎月出す。感覚ではなく数字で現状を把握します。
  2. 訪問件数を増やす導線をつくる……ケアマネ・病院・地域包括との連携を強化し、新規の入口を増やす。移動効率も見直す。
  3. 人を育て、定着させる……研修と症例検討で質を上げ、兼務・休みやすい体制で離職を防ぐ。質の高い人材が利用者と紹介を呼ぶ。
ポイントとくに最初にやるべきは「数字の可視化」です。どの理由で赤字なのかが分からなければ、正しい対策は打てません。月次で指標を追う習慣が、安定経営の土台になります。

潰れる事業所と伸びる事業所の決定的な違い

ちびウルフちびウルフ

同じ訪問リハなのに、伸びる事業所と潰れる事業所があるのはどうして?

リハウルフリハウルフ

一番の違いは「数字を見て動いているかどうか」。感覚だけで運営している事業所は、気づいたら赤字になっていることが多いんだ。

同じ地域・同じ報酬体系でも、安定して伸びる事業所と、じわじわ赤字に沈む事業所があります。その差は決して「運」ではありません。伸びている事業所には、いくつかの共通点があります。

伸びる事業所潰れる事業所
月次で稼働率・件数・経費を数字で把握感覚と通帳残高でしか経営を見ていない
ケアマネ・病院との関係づくりに継続投資新規の入口を待ちの姿勢で放置
研修・症例検討で質を高め続ける個人の経験頼みで教育の仕組みがない
非訪問業務をICTで効率化事務・会議に時間を奪われ件数が減る
他サービスと連携しリスクを分散訪問リハ単独で変動の波をもろに受ける

とくに重要なのが、損益分岐点(黒字と赤字の境目)を数字で把握しているかです。たとえば「人件費・家賃・車両費などの固定費を、20分換算で月に何コマ稼働すれば回収できるのか」を計算しておけば、毎月の目標が明確になります。逆に、この数字を知らないまま運営していると、「忙しいのに赤字」「気づいたら資金が尽きていた」という事態に陥りがちです。

ポイント経営の立て直しは、特別な裏技ではなく「当たり前のことを数字で管理し続ける」ことの積み重ねです。まずは1ヶ月、訪問件数と経費の内訳を記録するところから始めてみてください。問題点が数字で見えれば、打つべき手は自然と絞られていきます。

セラピストの離職を防ぐことも立派な経営対策

見落とされがちですが、セラピストの離職は経営に大きなダメージを与えます。1人が辞めれば、その人が担当していた利用者の継続が難しくなり、採用・教育にもコストと時間がかかります。結果として訪問件数が落ち、売上が下がるという悪循環に陥ります。

給与だけでなく、休みやすい体制、相談しやすい雰囲気、学びの機会といった「働き続けたい職場」づくりが、巡り巡って経営の安定につながります。人を大切にすることは、コストではなく投資だと考えましょう。

よくある質問(FAQ)

訪問リハビリの「適正な訪問件数」の目安は?
事業所の体制や移動距離によりますが、20分1コマ換算で1日あたり何コマ稼働できているかを基準に考えます。まずは自事業所の損益分岐点を計算し、それを上回るコマ数を目標に設定するのが現実的です。
赤字が続いています。まず何から見直すべき?
最初に「数字の可視化」です。訪問件数・稼働率・経費内訳を月次で出し、どの要因で赤字なのかを特定します。原因が分からないまま対策しても効果は出にくいです。
小規模事業所でも安定経営はできる?
可能です。ただし固定費の比率が高くなりやすいため、稼働率の管理と、訪問看護など他サービスとの連携・兼務でリスクを分散する工夫が重要になります。
利用者の卒業が多くて売上が安定しません。
卒業はリハ本来の成果ですが、新規の入口づくりと、卒業後も通所・訪問看護等につなげる導線を整えることで、売上の波を小さくできます。
まとめ
  • 訪問リハビリが潰れるのは、単一の原因ではなく複数の赤字要因が重なることが多い。
  • 代表的な理由は、訪問件数不足・事故と保険料・利用者数の変動・兼務なし・小規模・卒業過多・質の低下・高い家賃・非訪問業務の多さの9つ。
  • 立て直しは「数字の可視化 → 件数を増やす → 人を育てる」の順で進めると効果的。
  • とくに最初は20分換算の件数・稼働率・経費内訳を月次で追い、どの要因で赤字かを特定することが重要。
ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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